scene12 集中

「マガジン・チェンジにタイミングを合わせるぞ」士郎はブラックジュウベエの肩を叩く。

「オッケー」低く叫んだ黒田が、ブゲイソードを腰だめに構え、切っ先を後ろへ引いて脇構えに取る。

「剣豪奥義!」

 ジュウベエの叫び声に合わせて、ムサシも叫ぶ。

「剣豪奥義!」

「烈風両断!」叫んだジュウベエがダッシュするのと、ガラシャがマガジンの弾丸を撃ち尽くすのがほぼ同時だった。黒いオーラを放ったブラックジュウベエの身体が、有り得ない高加速で、撃ちだされた銃弾のように突進して塗壁の腹に斬りつけた。

 脇構えは別名「車の構え」というように、車輪が回転するように後方から大きく孤を描いた切っ先が前方へ出て袈裟に斬りつける。竜巻をまとった強烈な斬撃は、しかし塗壁の腹を裂くことはできない。しかし、ジュウベエの『烈風両断』に被せて「烈火厳流崩し!」と叫んで跳躍したレッドムサシが、刀を大上段に振り上げ、落下の勢いをつけて上空から斬りつけてくる。

「よけろ、ジュウベエ!」ムサシは味方に構わず攻撃をしかけ、横に転がって辛くもかわすブラックジュウベエがさっきまでいた場所に、『烈火厳流崩し』を叩きこむ。位置は正確にピンクのペイントの上。

「どいて! ムサシ!」ピンクガラシャの声が凛と響く。「ガラシャ・ガーランド、マグナム・モード」

 最後まで聞かずにムサシは側宙で火線から逃れる。入れ違うように、ガラシャ・ガーランドの強烈なマグナム弾が、塗壁の腹に突き刺さる。

 どーん!と腹に響く銃声が轟いて、大型の光弾が一発、二発と塗壁の腹に突き刺さる。

「五発しかないわ、さがって『剣豪奥義』を!」

「オッケー」

 ジュウベエとムサシがすばやく後退して、距離を合わせ剣豪奥義の構えを取る。

「次で五発目」ガラシャがトリガーを引きながら叫ぶ。ぴーん!という金属音を響かせてマグナム弾を束ねていたクリップが弾け飛び、ボルトが後退位置でストップする。すかさずブラックジュウベエが黒い閃光となって突進し、『烈風両断』を叩きつける。入れ違うようにレッドムサシが跳躍して飛び込み、『烈火厳流崩し』を。

 その間に再びバナナ・マガジンを装填したピンクガラシャが、ガラシャ・ガーランドを腰だめに構えてフルオートで弾丸を叩きこむ。

 が、ガーランドの連射をくらっても、塗壁はまったく怯む様子すら見せず、淡々と前進をつづける。すでにガラシャの引いた線まで十メートルを切っている。

「『剣豪奥義』って、あと何回くらい打てるの!」マシンガン・モードの連射で暴れるガラシャ・ガーランドを押さえつけながら、ガラシャが早口でまくしたてる。

「こいつは決め技だ」ムサシが塗壁の頑強さに舌を巻きながら答える。「ブゲイスーツのバッテリー的に、三回打てればいい方だ」

「あと一回しか打てないじゃない!」ガラシャがぴしゃりと叱咤するが、いまはそれどころではない。「弾が切れるわ。早く! 三回目!」

「人使いが荒いな」ぼそりと呟きつつも、後退し距離を合わせるジュウベエ。「ムサシ、合わせろ」

「おれが合わせ損ねたことがあるかよ」

 ガラシャ・ガーランドの沈黙に合わせて、三度ジュウベエが突進からの車の太刀を叩きこむ。

 かぶせるように上空からのムサシの一撃。

「硬え……」唖然とするムサシにガラシャが「どきなさい!」と一喝。側転回避するムサシの背中を削るように、ガラシャ・ガーランドのマグナム弾が塗壁の腹に突き刺さる。

 すでにペイントは焼け焦げて、ピンクの塗料は消え去り、ガーランドの銃弾とブゲイソードの剣豪奥義の波状攻撃を受けて、塗壁の腹のその一点は黒く焦げている。にもかかわらず進み来る巨大な壁は、ダメージなど皆無であるかのごとくゆっくりと確実に、ガラシャの引いたラインに近づいてきている。

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