scene2 生徒会長
生徒会長
「不許可ね」
「は?」けんもほろろな生徒会長の拒絶に、士郎はおもわず半笑いになって聞き返した。「なんでさ。ちゃんと人数もそろっているし、顧問のサインだってある。メンバー三人と顧問の先生一人で、同好会申請はできるはずだろ」
士郎は、机の上に置かれたコピー用紙をばん!とばかりに叩いた。規定の申請書である用紙には、決められた欄に、赤穂士郎、黒田武史、桃山あづちの名前と、顧問である田島守の名前が士郎の汚い字で書かれていた。
「まず!」井出萌香は、きっつい口調で言い返した。士郎がばん!と叩いた音に負けない大声だ。「同好会の申請に必要な人数は五人! それと、なにこの『剣豪戦隊ブゲイジャー』って名前は。こんなわけわからん名前の同好会は生徒会として許可できません。おまけに活動内容『妖怪退治』! ふざけるにも程があるわ。こんな同好会が認められるわけないでしょう、常・識・的・に、考えてっ!」
むっと口を引き結んだ士郎は、ぼそっと反論する。
「どこに問題があるんだ?」
「逆に、問題のない箇所を指摘してください」
「顧問の田島先生ってところは」
「このめちゃくちゃな申請書に捺印すること自体、教師として、いえ常識ある大人として問題ありでしょ」
「それは一理ある」変に納得してしまった。「じゃあ、五人集めればいいかよ」
士郎は頭の中で素早く計算する。赤と黒とピンクがいるから、黄色と青あたりを揃えればいいか。
「『剣豪戦隊ブゲイジャー』って名前も変えなさい。あと、『妖怪退治』って活動内容なら、たとえ『ソフトボール同好会』って名前でも申請は却下しますからね。第一、『ソフトボール同好会』はすでに存在しますから」
「すでに存在する同好会をいちいち例に出して、わざわざ揚げ足取るなよ」士郎は下唇をつきだして申請書をとりあげた。通ると思っていたのでボールペンで書いてしまったから、新しい書類が必要だが、ここで頼むのも癪なので、そのままクルリと背を向けて生徒会室を後にしながら、ちいさくつぶやく。
「あと二人かぁ……」
その瞬間、制服の尻ポケットで印籠フォンが有り得ないくらい激しく振動した。
「あ痛っ」飛び上がりながら、歯医者のドリルみたいに震えている印籠フォンのボタンを押す。
「おれだ、士郎」
「但馬守だ。妖怪の反応が出た。すぐに外環沿い、『象の鼻公園』へ急行してくれ。マップを転送するからナビを起動して指示通りに行けばいい」
「わかった」こたえた時には走り出していた。
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