scene14 この戦隊は……

「つ、強え」呆然とつぶやく士郎にあづち姫が鋭く叫ぶ。

「トドメを刺すわよ。二人とも、早くあたしの肩をおさえて」

 なんのこっちゃか分からなかったが、黒田が立ち上がってあづち姫に駆け寄り、その肩を背後から抑えたので、士郎も慌ててかけより、同じようにもう一方の肩をおさえる。

「ガラシャ・ガーランド、マキシマム・モード」ピンクガラシャが長銃のサイドグリップでギアを切り替え、再びボルトを後退させる。「カラミティー・ブレイク!」

 ガラシャが引き金を引くと、赤い巨大な光球が銃口から放たれ、強烈な反動で銃が跳ね上がった。構えていたピンクガラシャはもちろん、背後で肩を押さえていたブラックジュウベエとレッドムサシもその反動を受けて二、三歩後方へ下がった。

 赤く巨大な光球は、一直線に飛翔して土蜘蛛の身体を直撃し、すでに銃弾で穴だらけにされた上、火まで放っていた妖怪の身体を粉ごなに粉砕した。

 最大出力の超必(超必殺技の略)を放ったガラシャ・ガーランドは、機関部を解放して熱放出を行い、煙とも湯気ともつかないものを噴出した。

 とくになにもしなかった、というか出来なかった士郎は、メットの中でぜいぜい息を荒げながら、それでも意地になってつぶやく。

「この戦隊は、ピンクがリーダーかよ……」

 ピンクガラシャは印籠フォンを操作して、長大なガラシャ・ガーランドを亜空間に収納すると、ブラックとレッドを振り返った。

「ごくろうさま。あたしこのあと大切な用事があるから、あとはよろしくね。あの子たちにブゲイジャーのことはきちんと口止めしておくのよ」

 あづち姫は二人の肩をぽんと叩いて歩き出す。軽い身のこなしで、入ってきた窓から飛び出してゆくと、背後に一瞥も与えないで去って行った。

「なんだ、ありゃ」士郎はつぶやく。

「が、彼女がいなかったら、危なかったな」ブラックジュウベエがバイザーを上げ、レッドムサシを見下ろす。きりりと吊り上がった目のまわりに細かい汗が浮いていた。

「ま、それは認めるけどね」士郎は顎のロックを外すと、一気にブゲイメットを頭から外した。

「ぷはぁっ」彼も汗びっしょりで、外の空気が冷たくて頬に心地いい。士郎は頭をばさっと一振りして髪の毛の汗を払う。

 黒田もメットを外すと、汗に濡れた頬をふくらませて、「ふうっ」と大きく息をついた。「さて、あいつらを助けてやるか」

 縛られて転がされた小学生たちを指さし、歩き出す。

「ああ」うなずいた士郎も、こっちを心配そうに見ている航平やドカッチたちに軽く手を振って歩き出した。

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