* * * * * *
(以上が
(では、
(まだです、女王様! 評決が先、宣告が後にございます)
(私に口答えするか! こやつの馘を刎ねておしまい!)
(死体の作者はギロチン台に固定されると、チョッキン・ガー! その生首を読者の下に晒すのであった……)
(ちょっと待て。それじゃあ、いま言葉によってこの文章を記述しているのは、いったい誰なんだ?)
<respice in me, et miserere mei, Domine: quoniam unicus, et pauper sum ego>
<salvum fac dextera tua, et exaudi me>
* * * * * *
ああ
何故今まで忘れていたのだろう。僕は
「用事は済んだの?」
「ああ」
しかしながら、すぐ目前に迫っているのはより大きな構造の暴力、戦争なのだ。ゆえに結果的にはその影響は微々たるものだった。だから、表立って彼が糾弾される事にはならない。
「結果だけが全てよ」
娼婦の彩芽がそう言った。ギリシャ文明とルネサンス。家父長制。ウーマン・リブ運動と、それを象徴する上下一揃いのランジェリー。去勢された女。【個人的な事は政治的な事】。
「それなら、全ての物語は結末から描かれるべきだな」
そして今はケツの時代だ。華子が答えた。過程を重んじるのは敗者の言い訳に過ぎない。二人は建物の曲がり角に(まるで偶然居合わせただけかのように)他人のフリをしながら会話を続けた。
「
「そっちを
「今時分、誰が敵か分からないからな」
「アジア人は皆同じに見える?」
「人間がみな同じに見える」
「少なくとも、(銃を)向ける相手を選んでよね」
「――(守るべき)娼婦たちはいつ来る?」
「今に話すわ」
「人数は?」
「今に話すわ」
「期間は?」
「今に話すわ」
埒が明かないので華子は話題を変える。
「奴らに、虫草を売ったのか?」
「中国人には高く売れるのよ」
「あれはうちで採れたものだ」
「物資に入り用なら、領収書でも持って来て頂戴」
どうせそのうち、ただの紙切れになるわ。
「まあいいだろう。娼館の警護は?」
元締めが殺されたとなれば場は荒れるだろう。
「今のとこ、入り浸りの米軍だけで足りてるわ」
「あのロクデナシどもが?」
「力の誇示としては役立つわ」
「いずれ(奴らは)撤退する事だろう」
「そうでしょうね、」
でもあんたには関係ない事だわ。
「装備と糧秣を揃えておく。しばらく籠城出来るくらいのな」
蒐集とはすなわち不在を埋める為。所有こそが男性の本質。個人所有こそがこの
「あの餓鬼どもに何が出来るのか、
「戦争は数だ。多いほうが勝つ」
じゃあ、年齢は? 【産めよ殖やせよ】ってワケ? そんな役割に押し込められるのは御免だわ。
「あんたの兵隊は足りるわけ?」
「不足している」
そこは正直なのね。
「人足を集める?」
「余所者を入れたくない」
「じゃ、どうするつもり?」
「奴らが自ずに互いに、勝手に死ぬように仕向ける」
なるほど戦略ね。地雷や罠、それに陽動作戦と
「――それじゃ、契約成立のあかしとして、」
二人は初めて目を合わせた。
「あたしと寝る?」
華子は何も言わなかった。
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