第7話

 しばらく部活にはいっていない。体の一部が欠落した感覚とどこか解放されたような感覚。相反する二つの感覚に心が着いていけずいる。

 私は、今日も放課後に空いてしまった時間を埋めるために、校内を散策した。

 校内には、様々な音で満たされている。吹奏楽部の奏でる楽器、演劇部の発声練習、談笑している生徒の声。

 私はゆっくり観察しながら歩く。しかし、ある教室を見て足が無意識に止まる。

 教室のドアの隙間越しに、音楽に合わせて踊っている女子が見えたのだ。 

 彼女は一人で、人気アイドルグループの有名な曲をスマホからBluetooth機能の付いた丸いスピーカーで流し、歌いながら踊っていた。だが、歌声はダンスに気を取らわれ、徐々に小さくなっていき、ダンスも曲とテンポがずれていく。

 私は小さな頃から、母達のステージを動画投稿サイトなどを見てきたので、母達のダンスのまねをしているうちに、ダンスが自然と上手くなっていた。

 彼女のダンスや歌は、正直に言って下手だ。でも、私は彼女から目が離せないでいる。

 彼女がターンをした時に目が合ってしまった。

 私は気まずくなり、逃げようとした。

 「ちょっと待って!」

 鋭い声が私の背中にささる。

 「あんた、清水アリサだよね。」

 「はい。」

 「EGISTANCEの清水イズミの娘の清水アリサだよね。」

 「はい。どうして知っているのですか?」

 不信になり訊ねる。

 彼女はスマホを操作しながら近づき、画面を見せた。

 そこには、母と同じTシャツ着た男女が映っていた。 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る