第3話
私と四人の元メンバーとコウタくんは、墓前に花を添えて、線香を焚き、手を合わせ拝む。それぞれの母に対するする想いを浮かべながら。
その後、寺から路線バスで駅前まで戻り、レストランで会食をすることになった。
「アカリちゃん、部活、陸上部だっけ。どう調子は。」
メグミさんがコウタ君の口のクリームを拭きながら、訊いてきた。
「少しずつだけど、タイムが伸びている。筋肉もついてきた。」
デザートのイチゴパフェを夢中で食べていたから、片言になった。
「確か100メートル競走だっけ。アカリちゃんの専門種目。」
「そうです。基本は100メートルで、他にも200メートルやリレーもやっています。」
「イズミに似て、運動神経抜群ね。」
「お父さんとは仲良くやってる?」
「父は、仕事で忙しそうですけど、仲良くやっています。ただ優しいけど、頼りないところがあるから、どっちが親か解らなくなります。」
ユイさんが腕時計を見て、帰る準備をしていた。
「私、そろそろドラマの撮影に行かなくちゃ。もっと話かったのだけど」
チカさんは、「おお、我らの希望。石川ユイ。気合いれて行って来い。」と言って、ユイさんを励ました。
私は店を出ていったユイさんに追いつくために、周囲の迷惑にならないようにしながら、早歩きをして、
「待ってください。」と歩道を歩く、ユイさんに叫び、走って追いつく。
「アリサちゃん。どうしたの?」
「母の代理出産で私を産んでくて、改めてありがとうございました。」
「あなたが気にすることはないのよ。私とイズミの約束だから。」
ユイさんの黒い髪が風に吹かれて舞う。そして、微笑みながら私も風で乱れた髪を整えた後、頭をなでて、去っていった。
その後、私たちはレストランで色々話した後、解散になった。
帰り道、電車のドアのガラスに映る自分の姿をみながら、母がユイさんに代理出産をたのんだ経緯を振り返っていた。
母は寛解をしたものの放射線治療などで体力がなく、妊娠することは困難だった。 父は母の主治医だった。
母と父は子供がどうしても欲しかった、それは母の命が短いことを意識した上での選択だった。そこで、母はユイさんに代理出産をお願いした。ユイさんが了承したが私は了承した理由を聞いていない。
何故、ユイさんだったのだろうか?そんなことを考えつつ、帰路に着いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます