一噌幸弘

「今回は…今回はえ-と、どちら様?」


「知らぬか…知らぬであろうなぁ…」(遠い目)


「何でもったいぶってんの?早く教えてよ」


「うむ、この御方は日本の偉大な伝統音楽の継承者がひとり」


「ああ、伝統音楽の人…と言う事は雅楽かな?」


「と思うじゃん?違うんだなぁ」


「となると歌舞伎か何か?」


「惜しい!実に惜しい!余りに惜しくて道に軍手を落とすほど惜しい!」


「な、何急にそのテンション…」(ドン引き)


「正解は能の音楽を担当する能楽の一噌流笛方、一噌幸政の長男とす!」


「あ、能の…そんな人をよく知ってたね」


「この人は何も伝統音楽だけをやってる訳じゃないんだ。そう言う家の下に生まれた環境を十二分に活かして笛のエキスパートになったんだよ!」


「な、なんだってー!」(鼻水)


「彼はオリジナルアルバムを多数出していてね。それがどれも見事なんだ。和笛の演奏をしているんだけどそれが超絶技巧でね…聴いたらそのテクニックに間違いなく感動するよ。保証する」


「へぇぇ…それはそうと考えてみたら質問に答えてなくない?」


「ああ、何で知ったかだっけ?アニメ誌のコラムにおすすめとして載っていたからだよ」


「え、じゃあその人、アニメ音楽も担当を?」


「してないしてない。飽くまでもその記事を書いた人の趣味としてだよ」


「音楽を知る切っ掛けって色々だなぁ」


「本当にね」


「伝統音楽の家の出って事だけどそのオリジナルアルバムの曲の雰囲気も和風な感じなの?」


「いやところがそんな風な曲ばかりでもないんだよ。穏やかだったり激しかったりその曲調は変幻自在。すごくバラエティに富んでいるんだ。いくつか演奏動画もネットに上がっているから見てみるといいよ。西洋の楽器との共演は音楽に国境はないって実感したね」


「こう言う記事紹介の時、ネットに関連動画とか上がっていると紹介が本当に楽だよね。言葉を尽くして紹介する必要もないし、本当にいい時代になったものだよ」


「和笛って地味な存在のように感じるかも知れないけど彼の音楽を聞けば十分主役だって実感すると思う」


「和楽器と言うと和太鼓がよく注目されるけどそれだけじゃないって分かるね。ただ和太鼓は注目されて演奏する人も多いけど和笛はこの人に続く人、出てくるのかな?出来ればどんどん出て来て欲しいね」


「ただ知られてないだけで上手い人は他にも沢山いるのかも知れないけどね」


「そうであって欲しいなぁ。伝統は継承されなくちゃね」


「継承した上で新しい事にもどんどん挑戦して欲しいね」


「そう言う流れで言えば彼はその路線の第一人者だね」


 そんな訳で今回取り上げたのは一噌幸弘です。伝統的な能の笛を担当する一族の生まれである彼は笛の演奏において他の誰の追随も許さない程の超絶技巧を手に入れています。簡単に言うと和笛の演奏のむちゃくちゃうまい人です。


 和笛ってね、すごく演奏が難しいんですよ。それをあんなにいとも簡単に吹けてしまうってとんでもないんですよ。どれだけ正確に指を動かしてんねんと。曲によってはすごい高速で音階を奏でたりするんですけど信じられないですよ。あれは。


 それで彼は笛ならどんな笛でも吹いちゃうんです。和笛でも篠笛に龍笛に能管に尺八に自らが考案した田楽笛、リコーダーに角笛なんかも吹いちゃいます。しかも何本も口に咥えて多重演奏をこなしたりもします。普通考えられないですよ。このエピソードだけでも彼がどれほどの超人か分かると思います。


 伝統的な曲も普通にモノにしていますけど彼の真骨頂はオリジナルの曲の演奏ですね。伝統的な雰囲気に近い曲からジャズが好きなだけあってジャズっぽい曲も多数あります。ジャズバンドとの共演もよく行っていて和洋折衷な楽器構成での演奏も様になっているんですよ。カッコいいですよ。


 どんな感じなのか少しでも気になったら一噌幸弘で検索してみてください。多数の動画が見つかると思います。きっと新しい世界を知る事となりますよ。和楽器の魅力を再発見出来るはずです。今まで話題になった和楽器と言えば和太鼓に三味線に後は雅楽ですか…和笛はあまり強くPRされていなかった気がします。でも和笛もすごいんですよ!今回私はそれを強く訴えたかったのです!


 ただ、会話文にも書きましたけど後継が育っているのかなって心配はあります。どうか彼に続く超絶技巧の人がどんどん後に続いていって欲しいなと思います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る