茶の味

「茶の味?今回はお茶の話題?」


「違うよ」


「え?お茶の話題じゃないの?」


「それ、映画のタイトル」


「そんな映画あるんだ」


「何と土屋アンナの映画デビュー作」


「下妻物語じゃなかったんだ!」


「しかもこの映画のアンナさん、メインヒロインですよ。ヤンキーじゃなくて正統派美少女役」


「更にビックリ!今の彼女からは全然想像つかないね」


「例によってそんなにヒットした映画って訳じゃないんだけど、この映画、すごく面白いんだよ」


「監督は?」


「監督は石井克人監督。バイオレンスな映画で有名だね。でも茶の味はとてもハートフルな映画なんだよ。バイオレンス要素もちょっとあるけど」


「ハートフルでマイナーというと典型的な邦画って感じなのかな?」


「そうだね、確かに印象としてはそのジャンルで正解だと思う」


「何か特徴みたいなのはあるの?」


「映画で印象的なのが桜の木なんだ。だから春のこの時期に見るのが一番いいんだ」


「へぇぇ」


「それと他の作品と一番違うのは展開がシュールってところ。これ人によって好き嫌いが激しいからさ、合わない人はとことん合わないみたい。茶の味が好きな人とはきっと気が合うと思う」


「ちょっと興味が出て来た。どんな話なの?」


「簡単に言うと春野家って一家の春から夏にかけての記録、かな」


「家族が主役なんだ。確かにハートフルな物語が展開されそう」


「長男は青春するし、妹は大きな悩みを抱えているし、両親は仕事熱心だし、おじいちゃんは我が道を行っているし、親類はトラブルに巻き込まれちゃうし、山は生きているし、何であなたは三角定規なの?ってるし、人は生き埋めになるし……でも最後は何となくうまく収まるんだ」


「ちょ、途中から意味が分かんない」


「そうそう、エヴァの庵野監督も出てるよ。アニメパートもある」


「え?役者で出てるの?」


「うん、春野家の奥さんがアニメーターって設定なんだ。おじいちゃんが引退した伝説のアニメーターって設定」


「俄然興味が出て来た!」


「無駄にCGが使われていたり面白い出来事がてんこ盛りだから、感性が合えば楽しめると思う。テーマソングもいい味出しているしね」


「これはレンタルして確かめないといけないなぁ」


「思えば邦画ってさ、変に予算かけたりアニメや漫画の映画化ばかりが不評なだけで、それら以外は結構出来が良い作品も多いと思うんだよね。そう言う作品が普通に評価されるようになったらいいのにな」


「本当だね。悪いところばかりに目を向けずにいい映画に注目して欲しいね」


 と言う訳で今回のテーマは私のイチオシの映画「茶の味」です。

 土屋アンナの映画デビュー作であるこの映画はとにかく突っ込みどころ満載のハートフルストーリーです。


 監督は石井克人監督。バイオレンスな作品で有名かと思うんですけど、他にも色んな映画を撮っているんですよね。そんな監督の映画で一番ファミリー向けなのがこの映画だと思います。企画的には石井版ちびまる子ちゃんみたいなものを作ろうって感じで立てられたもののようです。


 物語はある一家の物語で、色んな物語が平行して進んでいきます。詳しく語っちゃうとネタバレになるんですけど、バラバラの物語がバラバラに語られつつ、最後は家族の絆を再確認したりしていい感じにまとまるんですよ。おじいちゃんの存在がキーになるんです。このおじいちゃんがまたファンキーで良いキャラなんですよね。


 映画のキャッチコピーは「みんな夕焼けみてた、宇宙のはじっこで」これ、映画を見ていると最後に実感します。特に大きな事件が起こる訳でもなく、日常はずっと続いていくんですけど、それでいいんだと思わせてくれます。


 映画の展開はシュールで、本当にシュールでシーンによっては説明不足な程なんですけど、気の良い春野家はどんな問題も何となく受け入れていくんです。ああ、いいなあと思って見ていられます。劇中歌も本当に面白いですよ。


 ちなみにこの映画での共演が縁で庵野さんの会社、カラーに轟木一騎さんが入社したっぽい感じみたいです。映画での共演シーンはないのですけど。エヴァンゲリヲン新劇場版のスタッフロールで轟木さんの名前を見つけた時はびっくりしましたよ。

 まさか同一人物?って思ったら本当に同一人物で。ちなみにこの人、それまでの本業も役者ではなくCMディレクターをしていたそうです。

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