第19話 はじめてのチュウ
当時の吹奏楽部の部長/副部長というのは、
部長:男子/副部長:女子と決まっていたようだ。
今なら男子が1人もいないという吹奏楽部が多いため、こんな制度は無意味だと思う。しかし部長って何をするというわけでもない係だったような気がします。
C男は、家が建材のブロックを製造業の会社経営をしている金持ちの1人息子だった。彼は、トロンボーン担当でしたが、我々と同じで、そう上手いというわけでもなく、見た目もお坊ちゃまで男子からは、やっかみもあり、人気じゃなかったのです。
それでも女子からの人気票がトランペットパートのガサツなガキ共を支持するはずもなくC男に決定しました。副部長はホルン担当のA子です。当時は気づかなかったのですが今思えば「ちょっと影のある綺麗な子」でした。いや、実際は超美人といったほうがいいかも知れません。これも女子票が集まっていました。中2男子って、所詮はまだ美人という美的感覚もまだ薄くて可愛らしい子が人気だったような気がします。たまたまA子の家が私の家と近かったこともあり楽譜を届けに行ったことがあります。
オレ
「あの~楽譜持ってきたんやけど」
A子の母親
「A子!**君や」
オレ
(胸が見えそうでドキドキするなあ)
A子
「ぁ・・・ありがとう」
(A子の家は、母子家庭だったのだが、
奥に知らん男がビールを飲んでいた)
オレ
「じゃオレ・・帰る!」
A子
「ちょっと待って佐波川に行かへん?」
オレ
「ああ・・ええよ」
(A子の肩ごしに、その男とA子の母親
がキスする姿が見えた。)
黙って歩いていく沈黙に耐えられなくなって出た言葉が
「なんか・・たいへんやなあ」
(シマッタ!何言ってんだオレは・・)
A子
「うん、ありがと!」
その後、川にキラキラ光る夕日を眺めながら1時間位、話しこんでいてたが、そろそろ暗くなる頃・・
オレ
「今度は、ホントに帰る!今日は数学塾
あるんや」
A子
「今日は、ありがと!」
突然の「はじめてのチュウ」でした。
なんかA子も、大変なんやなぁという物悲しい気持ちと自分が弱みにつけ込んだような気がして思わず自分の両手を握りしめていました。
A子
「**君、また明日ね~」
妙に明るいA子の声に何も言えないで立ちつくしている自分は、夕方だったからかも知れませんが、なぜなのか、もの悲しさと寂しさを感じていました。
http://www.youtube.com/watch?v=6SfLag6ktJc
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