ぼくのいちにち

目が覚めた。


今日もよく見知った天井から1日が始まる。


朝はせわしなく、身支度朝食を済ませると急いで愛車に乗り込んで会社へむけてハンドルを向ける。


季節的な面を除けば特に変化のないよく見知った風景が車窓を流れるさまを眺め、よく見知った社屋に到着。よく見知った持ち場にて特に変化のないよく見知った仕事をこなし、よく見知った上司から説教されながら1日が過ぎてゆく。



なんと平坦な、起伏のない、殺伐とした日々であろうか。

こんなことなら幼き日の自分に、その時間をもっと楽しんでおけよと忠告しておきたいほどだ。


実像は見えなくとも、光は確かに見えていた幼き日。

しかし実際、それは誰かが放っていた光であって決して自分が手に出来るものでは無かった。




暗中模索というにふさわしい状況下に、自分は置かれていた。





・・・いや「置いてしまった」というべきか。

なんの努力もせずにダラダラと幼き日を浪費してしまったツケなのだ、この状況は。


打開策はただ一つ。


「本気になる」


何に対して本気になるのだろうか?


帰宅して、自室にこもり、自分の現状を考える。


自室は趣味のものがズラズラと並んでいた。


まず目に入るのは壁際のエレキギター。

Suhr製で3年ローンを組んで買ったストラトシェイプだ。


その近くにあるラックには電源ユニットやら50Wのアンプやらミキサーやらが突っ込まれぎゅうぎゅう詰めになっている。

よくもまぁこれだけ集めたものだ。

活用できているかどうかは怪しいが・・・


ラックの上にはウィンドシンセサイザーの金字塔EWIがタオルを下敷きに寝そべっている。

本当はスタンドがあるらしいが面倒なので買っていない。


ただただTRUTHを吹きたいがために買ったといっても過言ではない。

チョロっとなら吹ける・・・はずだ。


ギターは7年半、EWIは2年。


本気になるべきは楽器か・・・?




楽器群に背を向け、幼き日から使い続けている机と向き合う。


机上には、垂れ下がる左手を鉛筆で描いた画用紙があり、製作途中のそれは画板に貼り付けられ自作のスタンドに立てかけてあった。


図らずもちょうど画用紙と対面する形となった。


通信教育に手を出したもののほぼ手つかず。

しかし金を出した以上やらなければしようがない。


描きたい題材も脳内で渦巻きまくっている。

机に向かえば描ける・・・はずだ。


本気になるべきは絵描きか・・・?





(このほかにも多数あるが割愛)





こうやって悩んでいるうちにTwitterやらニコニコやらに落ち着き、気づけば時刻はてっぺん越えである。


そのうち「なんで自分は何にもできないんだ」と更に悩み始め、悩んでいるうちに眠りにおち、目が覚め、そして・・・




今日もよく見知った天井から1日が始まる。





・・・シャレにならん。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

メモ 吉宮ひろまさ @yo_shi_mi_ya_215

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ