第三幕
カイトは、海側に建てられている
カラクリは、人々の生活には欠かせない物だ。 家庭用品、移動手段等、日常生活の様々な場所で利用されていて、蒸気機関の力で動く。
詳しい業務内容は知らないけれど、このカラクリ屋は主に家庭用品の販売、修理を行っているらしい。
ちなみに半年ぐらい此処に通っているけど、お客さんが来店しているのを僕はまだ見たことがない。
「ん?」
ちょうど橋の真ん中あたりで見えてくるカラクリ屋から二つの人影が出て来た。
珍しいな、お客さんだろうか?
こちらに向かって歩いて来る。
橋を渡りきる寸前ですれ違った。
僕は、軽く会釈をした。
二人とも、えらく汚れた身なりをしている。
服装の感じからして、たぶんこの町の人ではないだろう。
一人は小柄なお婆さんだ。 白髪のお年寄りだけれど背筋がピンと伸び、どこか言い知れぬ迫力を感じる。
そして、もう一人はとても綺麗な女の人だった。
おそらく僕より年上だろうか。 背丈は僕より少し高い。
一つに束ねた長い黒髪を揺らしながら、お婆さんの後ろについて歩いていた。
綺麗な歩き方をする人だった。
僕と彼女がすれ違う寸前、なぜか睨みつけられるような視線を感じた。
気のせいだろうか。
そんな二人とすれ違い、橋を渡りきって少し歩くとカラクリ屋に着いた。
お店と工房、二つの建物に分かれており、お店の出入り口には『カラクリ屋』と大きな看板が掲げられていた。
「こんにちは」 カイトは店内にヒョイと顔をだした。
店内には、炊飯器、洗濯機、冷蔵庫などのカラクリ機械が置いてある。
しかし誰もいない。 工房の方へと行ってみる。
すると、ちょうど工房の出入り口から
「おっ、これはこれは、カイト君じゃないかい」
「こんにちは、ヒサシゲさん」
「今日は、どうしたんだい?」
「えっ、今日は、あの、
「ん? ああ、そうかそうか、そうだった。 届いてるよ、
「そうですか、よかった」
「まぁ、中古品だけど状態は全く問題ないようだし、結構な掘り出し物だと思うよ。 カイト君、ついてるね。 じゃ、どうする? さっそく取り付けちゃうかい。」
「はい、お願いします」
「じゃ、ついておいで」
工房へと入って行くヒサシゲの後についてカイトも中へと入って行った。
青空にはサンサンと太陽が輝き、一番高い位置に浮かんでいた。
様々な工具、何に使用するのか分からない部品等が整然とされている工房内では、
「そこ! そのまま
「はい!」 カイトも
この作業を何度か繰り返し調整を終えると、二人は一息つくことにした。
「はい、お疲れ様」 ヒサシゲがお盆に冷たいお茶と羊羹を載せて、カイトに差し出す。
「あっ ありがとうございます」 カイトは汗まみれになった顔を手ぬぐいで拭きながら答えた。
「いい感じだね、あの
「はい」 カイトは、嬉しそうに返事をすると、冷たいお茶をグビッと一息に飲み干した。
「でも、本当にいいんですか?
「ん? ああ、いいのいいの、気にしないで。 君には、何かといろいろ手伝ってもらっているからね」
「ありがとうございます。 あの、ところでヒサシゲさん」
「ん? なんだい?」 羊羹をパクついているヒサシゲがカイトの方へと視線を向けた。
「今日、僕が来る直前に来ていた二人は、お客さんだったんですか?」
「ん? 二人? ああ、ああ、あの二人ね。 あの人達はね、お客さんとして来たんだけれども、ちょっとした昔の知人でもあるんだよね。 ていうか、カイト君、あの二人に会ったのかい?」
「会ったというか、すれ違っただけですけれど……」
「ふ~ん、そうかい、すれ違っただけかい。 何か話でもしたのかい?」
「いえ、挨拶をしたぐらいですけれど……」
「そうなんだ。 いやね、あの人達、旅の途中らしくて、なんでも移動で使っていた
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