第19話
「それで、このイカロスっていう岩、、、はぐれ星はヘリオスには行かないの?」
「行かないわ。イカロスはユピテルという星の近くまで行くと引き返すのよ。ユピテルを越えて母星に近づくと、この星はほうき星になってしまうわ。あなたは母星に行きたいの?」
「そうなのか。僕は、あなた方もそうだろうけど、星の中で生まれたんだ。だからもう一度星に帰って、星の住人達といっしょに何か星の役に立ちたいんだ。」
「あら、あなたは見かけによらず賢そうね。」
氷が嬉しそうに言いました。窪地の天井からはときどきヘリオスの光が差し込んで氷の体を照らしました。氷の体はそのたびにキラキラと輝きました。
「ここにいる岩や金属達ときたら頭が鈍くって、自分がどうやって生まれたかさえわかってないのよ。」
「僕も前は物知らずだったよ。大切な友達に色々と教えてもらったんだ。その友達は、僕に教えたことの全部をいっしょに旅したヘリウムから教わったんだって。物知りヘリウムさ。」
「ヘリウムが物知りですって?」
氷が馬鹿にしたような口調で言いました。
「まあ確かにヘリウムの中には長く生きているものもいるでしょうけどね。だけどそのヘリウムもどうせどこかの星で生まれたんでしょう。こんなこと言うのはなんだけど、私はヘリウム達よりももっと長く生きてるわ。宇宙といっしょに生まれたんですから。」
「ええ!?」
鉄はびっくりしました。
「氷は宇宙ができた時からいるの?」
「正確にはその頃私は水素だったわ。今は氷に姿が変わっているの。あなたはご存知かどうか知らないけど、私達水素は宇宙で一番たくさんいるし、ヘリウムやあなた達重いもの達が生まれたのもみんな私達が燃えたことから始まったのよ。」
氷は体を輝かせながら話し続けました。鉄という良い聞き手を得て、気分が良くなったのでしょう。宇宙が生まれたこと、星が生まれたこと、そして銀河が生まれたことなど、次から次へと話しました。
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