第17話

 やがて、辺りを埋め尽くしていた塵やガスの雲は晴れていきました。雲の中を、小さなものから大きなものまで様々な大きさの岩がびゅんびゅん飛び交っていました。岩は、行く先にある塵をかき集めながら進むので、岩が通り過ぎた跡には雲に穴が空きました。そのせいで雲が晴れていったのです。


 「あの時、炭くんもこんな岩に乗ってどこかへ行ってしまったんだろう。」


 あるときは途方もない大きさの岩を見ました。岩というよりは小さな星でした。その星は、周囲の岩や塵を吸い寄せながら遠くを横切っていきました。


 「星はああやって周りのものを吸い込んで大きくなっていくんだ。いつかは僕も星に吸い込まれるのかな。」


 ヘリオスを囲む雲は、岩や星の掃除のおかげで、どんどん晴れ上がっていき、今でははっきりとヘリオスの姿を見ることができます。ヘリオスは暗い宇宙の中で何よりも明るく輝いていました。


 鉄はヘリオスの他にも宇宙にはたくさんの星があることに気付きました。それまでは、塵やガスの雲に邪魔されて見えなかった星々が、雲が晴れてその姿を現したのです。


 「宇宙にはこんなにたくさんの星があったのか。ウェスティアもその一つだったし、ヘリオスもその一つなんだな」


 鉄は四方を眺めながら思いました。


 その時、鉄は、奇妙なことに、ひとつの星がだんだんと大きくなっていくのに気づきました。その星は、初めは小さな点だったのに、ぐんぐんと大きくなっていったのです。いえ、それは大きくなっているのではありません。こちらに近づいてくるのでした。


 大きな岩、小惑星です。


 ヘリオスを囲む雲を掃除したたくさんの岩の一つであるその小惑星は、まっすぐに鉄の方に向かってきました。そして、鉄の視界を小惑星が覆ったかと思うと、次の瞬間、鉄は小惑星にぶつかって弾き飛ばされていました。


 弾き飛ばされた鉄は、いったんは小惑星から離れていきましたが、やがて小惑星の重力に引かれて、小惑星の方に近づいていきました。今度はゆっくりと、しかしだんだんと速度を上げながら。小惑星の方からすると、真上から鉄の粒が降ってくることになります。


 近づくにつれ、凸凹している小惑星の表面がはっきりと見えてきました。鉄はそのまま小惑星に落ちていき、盛り上がったところにぶつかると、ふわっと少し弾んで、それから窪みに転げ落ちていきました。

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