第16話
それは、待ち望んでいた、いえ、待ち望んでいたことすらとっくの昔に忘れてしまっていた、新しい星が誕生した瞬間でした。
(新しい星が生まれたんだ)
鉄の心は震えました。
生まれたばかりの星の光は、はるか遠くのとても弱々しいものでしたが、鉄の気持ちを一変させるには十分でした。
同時に周りの暗闇からざわざわと声が聞こえてきました。鉄と同じように、突然現れた光に驚いている周囲の塵たちの声でした。鉄の気付かないうちにいつの間にか塵たちは一群になって同じ方向に進んでいたのです。
鉄はじっと光を見続けました。長い時間、冷たく凍り付いていた心がゆっくりと融けていくようでした。
それから少しずつ時間をかけてヘリオスの光は強くなっていきました。
しかし、いつまで経ってもぼんやりとしたままです。というのは、生まれたばかりのヘリオスは、たくさんの塵やガスに囲まれていましたので、離れた位置からは輝く星そのものを見ることはできなかったのです。
ヘリオスの放つ光が強くなるにつれ、鉄の周りの様子もよく見えるようになりました。何も見えなかったころに思い描いていたのは、塵たちがまばらに浮かんでいる宇宙でしたが、実際は四方八方を塵やガスが埋め尽くしていました。塵とガスの雲の中に鉄は浮かんでいて、その雲の中心にいまヘリオスが輝いているのです。
一粒の塵が近づいてきました。
「やあ」
「こんにちは」
「急に明るくなったね。光を見るのってとても久しぶりなんだが、あれは何だろう」
その塵は尋ねました。
「ヘリオスだよ」
「ヘリオス?」
「新しい星の名前さ。星は生まれては消え、消えてはまた生まれるんだ。僕たちの星が今生まれたんだよ」
「僕たちの星・・・」
「そうさ、僕たちの星さ。今は遠く離れているけれど、いつかあそこに行くんだよ」
しばらく話した後、塵は離れていきました。
それからも鉄は幾粒もの塵と出会い、ヘリオスの話をしました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます