第13話
触れたか触れていないか分らない程の感じでしたが、ほのかな熱が確かに伝わりました。
「ぶつかったね。」
「ぶつかった。」
それは、今から二人が次第に離れていくということを意味していました。近づくのにかかった時間と同じ時間をかけて二人の距離がゆっくりと広がっていくということです。
二人は離れ離れになって、鉄はまた独りぼっちになります。それはとてもはっきりしていることなのですが、鉄はあえてそのことは考えないようにしました。
それからまた二人は話し続けました。生まれ故郷のウェスティアのこと、これから住むことになるだろうヘリオスのこと。時間を惜しむようにたくさん話しました。
時が経つごとに互いの声が遠くなっていきました。それと反対に宇宙の暗闇の冷たさがじわじわと押し寄せてくるようでした。
「僕たち、離れ離れになるんだね。」
鉄はたまらず言いました。
「そうだね。」
「また会えるかな。」
「会えるさ。」
「会えるかな。」
「だって僕たちは同じウェスティアで生まれて、途方もなく長い旅をした末に会ったんじゃないか。だから会えるよ。いつかまた、もう一度途方もない旅をしたその後で、きっと会える。」
「そうだね、また会える。」
そう自分に言い聞かせながらも、鉄は内心とても悲しいのでした。
炭の言うとおり、また会えるかもしれませんが、それまでにまた長い長い時間が必要なのですから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます