第13話

 触れたか触れていないか分らない程の感じでしたが、ほのかな熱が確かに伝わりました。


 「ぶつかったね。」


 「ぶつかった。」


 それは、今から二人が次第に離れていくということを意味していました。近づくのにかかった時間と同じ時間をかけて二人の距離がゆっくりと広がっていくということです。


 二人は離れ離れになって、鉄はまた独りぼっちになります。それはとてもはっきりしていることなのですが、鉄はあえてそのことは考えないようにしました。


 それからまた二人は話し続けました。生まれ故郷のウェスティアのこと、これから住むことになるだろうヘリオスのこと。時間を惜しむようにたくさん話しました。


 時が経つごとに互いの声が遠くなっていきました。それと反対に宇宙の暗闇の冷たさがじわじわと押し寄せてくるようでした。


 「僕たち、離れ離れになるんだね。」


 鉄はたまらず言いました。


 「そうだね。」


 「また会えるかな。」


 「会えるさ。」


 「会えるかな。」


 「だって僕たちは同じウェスティアで生まれて、途方もなく長い旅をした末に会ったんじゃないか。だから会えるよ。いつかまた、もう一度途方もない旅をしたその後で、きっと会える。」


 「そうだね、また会える。」


 そう自分に言い聞かせながらも、鉄は内心とても悲しいのでした。

 炭の言うとおり、また会えるかもしれませんが、それまでにまた長い長い時間が必要なのですから。

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