第11話

それからも二人は色々な話をしました。


 「物知りヘリウムから聞いた話の中で一番驚いたのはこれだよ。ヘリウム達は燃えて炭素になるんだって。炭だよ。つまり僕の仲間になるわけだ。それどころじゃない、僕だって昔はヘリウムだったってことなんだ。昔のヘリウムだった僕が燃えて今の体になったってことさ。」


 「本当かい?それなら僕も昔は違うものだったのかなあ。生まれる前のことなんて覚えてないや。でも僕ら鉄達のいたところのことは覚えてる。どこからともなく仲間がやってきてどんどん数が増えていったんだ。僕も彼らもどこから来たんだろう。」


 「もしかすると君も元は炭素で、その前はヘリウムだったのかもしれないよ。僕の仲間は新しく生まれる奴もいたけど、燃えて違うものになる奴もいた。何になったのかは分らない。燃えて違うものに生まれ変わった奴は皆ウェスティアの深いところへ潜っていってしまったんだから。」


 「でも君は燃える前に吹き飛ばされたんだね。」


 「そうさ。君も、そして物知りヘリウムも。」


 彼らの言うとおり、事実、ウェスティアはその寿命が終わるとき、巨大な爆発によって自分の中に住む様々な物質を四方に吹き飛ばしたのでした。その激しさは想像を絶するほどで、爆発のときウェスティアは、今、私たちの頭上に昇る太陽の1億倍も明るく輝いたのです。


 「物知りヘリウムはひどく残念がっていた。」


 「どうして?」


 「自分が燃えられなかったからさ。」


 「そんなものかなあ。」


 「彼は、燃えて星が輝くのを助けたかったのさ。ウェスティアと、ウェスティアの住人達にとっての何か役に立ちたかったんだ。」


 「そうなのか。僕はそんな風に考えたことはなかったな。」


 「ウェスティアは彼にとって3番目の星なんだ。その前にいた二つの星では彼は燃えることができなかった。仲間のヘリウムが燃えていくのを見ながら、自分の番がくる前に星がなくなっちゃたんだ。ウェスティアができたとき、彼は今度こそ燃えようと思ったらしいよ。だけどまた燃える前に吹き飛ばされてしまった。それでその後僕や他の石なんかと旅したわけなんだけど、彼は星はまた生まれると信じていたし、次にできる星でこそ燃えて輝きたいと強く願っていたんだ。」


 鉄は会ったこともない物知りヘリウムの考え方に強く惹かれました。この宇宙の中で、一つの星に集まったもの達の中で、彼は自分の果たすべき役割をしっかりと持っているようでした。

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