第9話

 「ねえ、ひとつ教えてくれないかい。」


 鉄は言いました。


 「なんだい?」


 「どうして君のあいさつはあんなに長いの?僕はあいさつは短くないといけないと思っていた。だって僕ら塵がぶつかるのは一瞬だ。短くないと相手に聞こえないだろう?なのに君のあいさつは『やあ、どちらから?』だ。とても長いよね。」


 少し間をおいて闇の中から炭の返事が返ってきました。


 「ウェスティアを離れて以来、僕たちはずいぶんと長い時間宇宙を漂っているよね。」


 「ああ」


 「君は気付いたかい?僕らのあてのない旅が始まった頃と今とで塵同士がぶつかる激しさが違っていることに。」


 「え?なんだって」


 「ずっと以前、僕たちは今よりもっと激しくぶつかっていたんじゃなかったかい?」


 鉄は、これまで考えてもみなかったことを指摘されて驚きながらも、じっと思い返してみました。


 「そう言われてみればそんな気もするな」


 「物知りヘリウムが教えてくれたんだ。いいかい、星は一度吹き飛んでもまた生まれるんだ。」


 鉄は炭の言っていることがすぐに飲み込めませんでした。


 「それはウェスティアがまた生まれるということ?それはバラバラになった仲間たちがまた一つに集まるということ?」


 「それは僕もよく分からない。でも、そもそも、宇宙には星がたくさんあるんだ。今は何も見えないけれど、この暗闇の向こうのどこかにあるらしい。そして星たちは生まれたり死んだりを繰り返しているんだ。僕たちのウェスティアもその一つだったんだよ。この辺りを漂っている塵やガスたちはウェスティアから来たのもいるけど、違う星から来たものも大勢いる。物知りヘリウムが言うにはやがてそいつらが引き寄せあって、新しい星をつくるそうだ。」

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