第7話

 返事はすぐに返ってきました。


 「やあ、初めまして」


 鉄はびっくりしながらも踊りださんばかりに喜びました。それはそうでしょう。仲間と離ればなれになって、いったいどれぐらいの時間誰とも会話せずに過ごしたでしょう。自分の呼びかけに誰かが応えることがこんなに素敵なことだったとは思いませんでした。


 「えっと、君は誰だい?」


 「僕かい。僕は炭素さ。炭だよ。君は?」


 「僕は鉄だ。炭なんて聞いたことがない。僕は僕と同じ鉄としか会ったことがないんだ」


 実は鉄はこれまでに鉄以外のものと会っていました。でもそれはほんの一瞬ぶつかるだけだったので、相手が誰だか確かめることができずにいたのです。


 「僕は鉄を知っているよ。他にも岩や酸素、物知りのヘリウムとも会った。少し前までいっしょに旅をしていたんだよ。」


 「旅をしていたって?どういうこと?」


 「旅だよ。大勢でひとかたまりになって、この宇宙空間を飛んでいたんだ。」


 「宇宙空間?この真っ暗闇は宇宙空間っていうの?」


 「そうさ。宇宙さ。ところで君はこれまでずっと独りで宇宙を飛んでいたのかい?」


 「そうだよ。」


 「だったら少し『もの知らず』かもしれないね。いや、君に気を悪くしてもらいたくないから始めに打ち明けておくけど、僕も独りでいたころは『もの知らず』だった。今僕が知っていることは全部物知りヘリウムから聞いたことさ。」


 もの知らずと言われて鉄は少しむっとしましたが、正直そうな話し方をする炭に親しみを感じました。

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