第5話

 「でも、『どちらから?』と聞かれたらなんて答えたらいいんだろう。『ついこの間まではちょっとそこの暗闇、その前はもう少し向こうの暗闇』」


 鉄はとりとめもなく独り言を続けました。鉄には時間が有り余るほどありましたし、何より独り言は寂しさを紛らせてくれたからです。


 「その前、もっとずっと前はどこだったかな。あの仲間たちがたくさんいたところ。確か、皆あそこのことを『ウェスティア』って呼んでいたっけ。そう、僕はウェスティアで生まれたんだ。そしてあるとき、突然すごい勢いで吹き飛ばされて、皆散り散りになっちゃった。」


 楽しかったころのことを思い出すとまた寂しさが強くなって、鉄の独り言は重くなってきました。


 「どちらから?-ウェスティアです-それはどの辺りにあるんです?-遠くです。ずっと遠く。それはもう本当に遠いんです・・・」


 「おかしいぞ!」

 突然、鉄はなんとなく引っかかっていたことを思い返しました。

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