第2話 騎士アルベルト
「気の進まん
背後から声がした。レオンハルトの独り言に応じ、横に馬を並べて来たのは、
「勝手に配置を離れていいのか。」
レオンハルトは、脱いだ
「部下には作戦の打ち合わせと言ってある。」
「作戦も何も、騎兵は突撃が基本だから、馬を走らせる以外やることは無いだろう。」
「がさつな考え方だな。お前のような男が、よくも騎兵の指揮など
独立指揮を
騎兵は、的確な判断力と、
いくつかの過去の戦闘で
「俺がいいかげんでも、クソ
ようやくレオンハルトも笑顔を見せた。
気心の知れた友に皮肉を言われても、レオンハルトは腹など立てない。戦争と
「気が進むも進まないも、我々
「言いなりにならざるを得ない。帝国とロンバルディア王国は、国力が違いすぎる。」
言いつつ、レオンハルトは自分に言い聞かせているようでもあった。
アルビオン帝国はウィリディス大陸の面積の過半を占める、広大な領土を持った連合帝国だ。それだけで大国と呼べるアルビオン帝国本土(皇帝領)に加え、三つの王国と一つの公国を間接支配している。
帝国皇帝領を取り囲むように位置するそれら四つの従属国は、レオンハルト達の母国である南方のロンバルディア王国、北西のヴァルナ王国、北方のリエージュ王国、西方のシュタイアー公国であった。
従属国は、皇帝領に対して年ごとの
過去に帝国に戦争で敗れたか、あるいは戦争の前に降伏したのか。
言ってみれば、四カ国は戦争に敗れながら、滅びることを許されずに、生き長らえさせられているだった。
「俺達属領軍は、損害の出やすい
今度はアルベルトの表情が
「帝国のいつものやり口さ。まあ、
レオンハルトは不敵な笑みを浮かべて応じる。
「うむ...属領軍が
「そして敵が弱ったところで皇帝軍本隊がとどめを刺して、手柄を持って行く。
腹立たしい気持ちが同じのレオンハルトは、アルベルトを元気づけようと、おどけ口調で受け応える。
「話をしたかったのはそれなのだがな。皇帝軍にとっては、属領軍の部隊を、まず敵にぶつけるのが定番の戦術なのに、今回はなぜか我々は温存されているようだ。違和感を感じないか?」
ガリシア王国軍と帝国本領軍の重装歩兵団がせめぎ合っている前方を見やりつつ、問いかける。
「ああ...それは俺も気になっていた。」
先ほど総大将の方を見やった時の思考を、レオンハルトはもう一度たどった。皇子は、そして、その指揮を補佐する本営の将軍達は一体何を考えているのだろう。
用兵の常道として、まず、弓兵が弓を撃ちこんで敵兵の数を減らし、次に騎兵を突入させて敵隊列をかき乱し、そして後から整然と続く歩兵が、乱れた敵陣を制圧するのというのが、最も効果的な戦い方だというのに。
俺達属領軍をすり
皇帝領の軍隊は”
そして、征服戦争であれ、防衛戦争であれ、皇帝領が兵を起こす時には、従属国は支援兵の提供を要求される。支援兵である属領軍は、皇帝軍に戦力の一部として
帝国は、こうして属領軍に出征を
従属国の反乱や分離独立を防ぎ、帝国支配の安定を保つための、弱体化政策であった。毎年、皇帝本領に支払わせる
しかし、このような反乱防止政策が、
帝国の騎兵部隊が動かない事の他に、もう一つ気にかかることがあった。ガリシア軍もまた、騎兵部隊を
本領軍はなぜ俺達を戦わせないのだ?そして、ガリシア騎兵はなぜ動かない?
士官学校で学んだ
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