第3話:入力世界
その世界は光で満ちていた。
あまりに
なぜかゼータは、その光を
つまり「粒度の小さいそれ」という認識が可能であった。
その中をゼータは飛んでいた。
ゼータに意識はなかったが、ゼータの意識というものはあるようだった。
すなわち心身二元論的な見方をすれば、それらの統合がなされない。
ゼータの身体という光と、ゼータの意識という光が、それぞれ存在していた。
特異な生態を持っていたとはいえ、現代日本に生まれたゼータである。
特定の宗教観は持ちあわせておらずも、混成的な死生観に基づいて、ゼータの意識は思考した。
「
思考は、小さいそれとなって広がっていった。
ゼータの意識は、それによる変化をしばし観察したようであったが、その疑問に答えるものなどいなかった。
すべてがキラキラと輝いて、ゼータの身体とゼータの意識をどこかへと運んでいく。ただそれだけ。
不思議と気持ちは穏やかで、現状への疑問こそあれ不安はない。
むしろ「還ってきた」と感じていた。
入力が記述となり記述が情報となり情報が実存となり実存が世界となる世界に。
――とすればそれはアレではなかろうか。
いや、違う。と、ゼータの意識が否定した。
「
――本当にそうだろうか?
ゼータの意識は自ら発した「速さ」という単語に反応し、色を変えていた。
それはこれまで、彼を縛り続けていた執着であり。
また、彼をこれからも縛り続ける宿命である。
「
どうやら、その言葉によってアイデンティティを得たようであった。
意識の光は色を変え、形を変え、ゼータの身体の光を包み込み、一本の矢となって、永遠の光の中を直進する。
どこか、遠く、望まれし世界に向かって。
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