5話

「久史くん私がいなくなったら絶対履歴書なんて書かないで本読みながらタバコでも吸ってるんだろうな...」


 はぁ...

彼女はそうため息をつくと大学の教室の机に突っ伏した。


「つぐみも大学に行ったことだし、食後の読書タイムといきますか」


 そう言うと、お気に入りの紅茶をお気に入りのカップに入れて、椅子に座り窓際の陽の当たるところに移動して本を読み始めた。

 食後はやっぱりお気に入りの紅茶とタバコと読書に限りますな。

 さすがに一日中これを続けると講義が終わってまたうちに来たときつぐみに怒られそうだから一時間だけ、一時間だけ。

 気づくと暖かかった窓際も肌寒くブルッと震えた。しかしそれは寒さだけからくる震えだけではなかった。


「久史くんやっぱり一日中何もやらないで家に居たんだね」


 彼女はにっこり笑いながら手には包丁を持っていた。


「あれ、もうこんな時間?おかえり!今日の夕飯は何かな?」


 無理やり何事もなかったように話を続けたがやはりそういうわけにもいかず、夕飯を食べている間はガミガミつぐみの小言は止まらなかった。

 彼女がこのように小言を言いつづけてる間、僕はウンウンと頷くだけしかしないと心に誓っている。

 付き合い始めたとき、彼女が小言を言っているとき反論をしたら延々と喧嘩が終わらず、しまいには二週間の間、口もきいてもらえなかった。


やっぱり長く付き合う秘訣はウンと頷くことが大事だな。


この小言は朝まで終わることはなかった。


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クリームハッピーソーダ shiki @shiki_rock11

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