2話
取りあえず外に出よう。外の空気をすって頭の中をスッキリさせればまたやる気も出るかもしれない。こんな煙たい部屋にいてはダメだ。外に出よう、外に。そう言って部屋から飛びたした。
「いらっしゃいませー、ってえっ!? 久史君また来たの? 私がバイトしてるときはあんまりこないでって言ったじゃん」
そう俺はいつものようにつぐみの働いている喫茶店に来てしまった。
「こんなところで油売ってていいの? 履歴書とかちゃんと書いてるの?」
そう言いながらもいつものでいいの? と聞いてきいてきてくれたので、うんとうなずくと彼女はホールに向かった。つぐみはやさしいな、こうやってバイト先に来ても追い返さないし、俺のいつも注文するものもすぐ持ってきてくれる。
「はい、お待ちどうさま。いつものクリームソーダ。頑張ってもらわなくちゃだからちょっとおまけしてサクランボ二個にしておいたから」
本当につぐみはやさしいな、こんな情けない俺にサクランボおまけしてくれるなんて。そう俺はクリームソーダが大好きなのだ。小さいころから父さんとでかけるといつもクリームソーダを食べさせてくれた。それが習慣になりどこかに出かけるたびにクリームソーダを頼んでしまう。
「久史君クリームソーダ好きだよね。美味しい?」
ニコニコしながらそう聞いてきたので、うん、美味しいよ。僕はそう言うと、
「この間受けた企業残念だったね、でもまだ何個か採用待ちの企業あるんでしょ? 大丈夫だよ」
なんて優しい言葉だろう。俺はその言葉がききたくて今日もこの喫茶店に来てしまったのだ。ありがとう聖母つぐみ。君とクリームソーダがあれば僕は生きていけるよ。そう思いながらクリームソーダを飲んでいると
「私あと少しであがりだから帰りに夕飯でも一緒に食べようか。今日は付きっきりで履歴書考えてあげるね」
そう言うと彼女は仕事に戻って行った。やばい、今日電話からここに来るまでウダウダ言ってたせいで履歴書何にも手をつけてないどうしよう…。またつぐみに怒られてしまう。あいつ怒るとものすごい怖いから嫌なんだよな…。
「あの調子だと久史君ここに来るまで履歴書とか何も手をつけてないんだろうな。今日は徹夜かな」
彼女にはお見通しだった。
そうこう喫茶店でグダグダしていると、彼女がやってきた。お疲れさま。そう僕が言うと、
「ありがとう。でもお疲れするにはまだ早いかな。これから付きっきりで履歴書とか考えるんだからもっと疲れるよ」
彼女の顔は笑っていたが、僕はぞっとして話をそらした。
「何が食べたい?」
そう言うと、
「逆に何が食べたいの? 今日は私がつくってあげるからこれからスーパー行こうよ」
そう言われたので僕はハンバーグが食べたいというと、
「久史君は子供みたいだよね。私、この歳でおっきい子どもがいるなんて大変だよ」
そういうと赤ちゃん言葉で俺に話しかけてきたので少しムッとした。それを見て彼女は、
「ごめんごめん。じゃあお家についたら久史君も手伝ってね」
俺は言われるがままに頷いた。
スーパーにつくといつものように俺が荷物持ちだ。彼女はてきぱきと料理の材料をカゴの中に入れていく。彼女は肉が大好きな俺の身体を気遣ってサラダなど野菜などもたくさん使った料理もしてくれる。そんな彼女がいなければカップラーメンばかり食べている俺は栄養失調で死んでいたかもしれない。感謝しています。そう思いながら買い物は終わって俺の家に向かう。
「ところで久史君はどんな仕事がしたいの?」
そう彼女に言われて思った。俺はどんな仕事がしたいんだろう。そんなことも考えずに僕はただただ有名な企業ばかり受けていた。それを見ていた彼女は、
「もしかして久史君、そんなことも考えてなかったの? そりゃ受からんわけですよ」
ごもっともです。昔から俺は音楽や漫画、いわゆるサブカルチャー的な物は大好きでよく見たり聴いたりしていたがそれを仕事にしたいかと言われるとそうでもない。やっぱり自分の実力はわきまえている。俺には実力も知識もない。いわゆる幅広く浅いというものだ。だからそう言う関連の企業は最初から考えてはいなかった。
「久史君ももう少し自信がついてくれればいいんだけどなー。せっかく趣味もたくさんあるんだからそれ関連の企業も受ければいいのに」
そんなこと言われましても生を受けて早二二年この状態で生きてきたのだからどうにもならないのだ。本当にどうしようか。せっかくつぐみも手伝いに来てくれてるんだし協力してもらおう。まず肝心な自己PRだな。俺はこの自己PRを考えるのが一番苦手でいつも頭を悩ませている。大体普通に生きてきた人間で自己PRすることなんてほとんどないだろう。しかしこれを考えないことには次に進むこともできない。僕はうんうんと唸りながら頭をいろんな方向にひねらせている。
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