小麦色の肌と圧倒的な男
女は、やはりというかなんというか、
まさか今になって
そして
「少し聞きたいことがあるんだけど・・・」
「少し聞いてもいいかな・・・」
かぶった。きっちりと。彼女がため息をついてストローを咥える。
「いyあ、いや君からd、どうぞ。」
俺は紳士的に勧める。彼女は俺の言葉を聞いて顔を上げる。
「あら、優しいね。あんた。」
「じゃあ聞くわ。なんで
彼女は俺に問いかけた。そして今度はきっちりとそれに答える。
「俺は
「答えになってないわね。まあいいや。じゃあなんでやめたの?」
数秒の間、俺は考えた。だが答えは決まっている。
「俺はもう死んだから。十年前の戦争で死んだんだよ。ここにいる俺はその時の残骸に過ぎない。」
「そんな考えの奴が今も生き残っていられたなんて驚きね。みんなとっくに死んでしまってると思ってたわ。」
「手厳しいな。」
「そう?こんなところでぼんやりと暮らしている人を見れば誰だって驚くわよ。それはそうと、あんたは何をして暮らしてるの?まさか城主なんてことはないと思ってるけど。」
「君の言う通り、俺は城主じゃない。単なる一介の警備兵だよ。ちなみに勤務形態は夜勤で夜十一時から朝五時まで。」
「警備兵!?はぁ!?信じられない。警備兵をしている
「そうかい。気楽なものだよ。ところで君はなぜこの街へ?」
「あたしはサイタマの地域管理局に頼まれてオーミヤからここの暮らしぶりを調査しに来たのよ。」
「君は役所の人間なのか。」
「いいえ、正確に言うと違うわ。私はいろいろな所へ出かけて様々な仕事をする、言うなれば出張何でも屋みたいなものね。」
「ふーん、そうか。」
俺はジュースを一口飲んだ。そして彼女は尋ねる。
「ねえ、この辺りにいい宿屋ってない?あたし、あと数日間は調査しなければならないから手頃な宿を探してるのよ。」
「それなら、俺がよさげな所へ案内しよう。特に予定もないし暇だったんだ。」
「あら、優しい。さすがは町のヒーロー警備員。よろしくね。」
彼女は微笑みながら言った。確実に舐められている。そう感じつつも俺は彼女の笑顔を見て、結構可愛いじゃないかなどと思ってしまった。
静かで小さな街。おそらく多くの旅人はここを初めて見たときそう思うだろう。そして驚くのだ。一度その足を踏み入れればわかるその密度の高さに。中央には様々な建物が折り重なった小丘、それを取り囲む建物の波、波紋が打ち寄せるのは外側を囲むしっかりとした城壁だ。まるで街が一つの城のようだ。だが、人影はあまり見当たらない。それもそのはず、街の収容可能な人数よりはるかに少ない人口のため外から見ると静寂に包まれているように見えるのだ。だからこの街を知る者の多くは街を擬態城と呼ぶ。その死を装っているかのような雰囲気を例えて。そんな街の名はシントーキョー、俺の墓だ。そして今、俺は墓参りに来た客に宿を貸してやろうとしている。
「ねえ、あとどのくらいで着くの?さっきから同じところを通っているような気がするんだけど。」
彼女が退屈そうな表情で尋ねる。
やはり、新参者にはこの街は厳しいか。俺はなんとなく誇らしいような気持ちを感じ、新参者に上位者として丁寧に教えてやる。
「ここは擬態しているんだ。なぜ擬態するか?それは餌を惑わすためだろう?」
「はいはい。あんたはこの街の英雄だったわね。黙って付いて行くわ。」
俺の気障な返しを冷たくはじき、彼女はまた街並みをざっくり観察しながらの歩行に戻った。
あと十字路を右へ2回、その先第十五幹を左へ、二つ目の角を右へ曲がり、三叉路の二つとも真ん中の道を選んで、まっすぐ進めば目的地へ到着するはず・・・
ぼん。ぼんぼんぼん。突然大砲の音が鳴り響いた。
「何!?盗賊か何か?それとも侵略者?」
「どちらでもないよ。」
「じゃあなんなのよ!」
動揺する彼女に俺は事実を的確に伝える。
「落ち着いて前を見ろ。」
彼女の息を飲む音が聞こえる。無理もない。目の前に魔導兵およそ数百体が機械音を唸らせながら行く手を阻んでいるのだから。数百体の圧力を受けながら落ち着くこと数秒。魔導兵の中から一人の男が現れた。
「遅かったじゃないか。待ちくたびれたよ。」
俺の背中を悪寒が走った。
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