第5話


そのあと、わたしはお尻の電球が切れつつも、足掻いた。


雄蛍は子孫を遺さないと生きてるは意味ない。


お尻の電球がなくてもだ。


すたすたと歩く。


ファイルがそろそろぱんぱんになってきた。やばいかも。


さいきん、断罪されたから螢は電球が切れたのだと、考えた。


カナリアはきっと美しく鳴きすぎたから。


椅子に座ってファイルを開く。


小林 夕被告。


なんの偶然か分かんないけど、兄の名前とおんなじだ。


小林 翡翠。わたしは裁判官になりました。


翼のもげたカナリアで、光れませんが、まぁ、生きてるからいっか。


わたしは木槌を持つ。


被告と視線が絡む。


どうしてか兄にどことなく似ていて、被告はかなしそうな表情をしていた。


まるで自殺したけど、戻ってきてしまった、とでもいうように。


これからわたしは、あなたの自殺を裁きます。


じゃあね。


光れない、螢。



『カナリア』

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カナリア しゅか @silyuka

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