第2話

一言でいうと、兄は天才である。


大学を行っていないのに大学の問題が解けるし、推理小説なら簡単に推理してしまう。兄と推理ドラマは絶対見ない。


主婦で能天気な母曰く「ニートなとこが残念ね」、テキパキ働いてきた努力家の父曰く「何だあいつは」。


そしてわたしは『カナリア』だと思う。


籠に入れられた、何もできずさえずるだけの小鳥。


まぁ、そんな天才兄が「カナリアは翼がもげている」と言って自殺した。


母曰く「天国に逝くといいねえ」と泣いて、父曰く「馬鹿が」と男泣き。


わたしは「遂にうるさくて飼い主に首を絞められた」と無表情。


兄はたぶん、そのうちこの世に飽きちゃうって、考えてた。


遺したのは未だ意味不明なアドバイス『ほたる』と『カナリア』。


あぁ、そうだ。ほたるがあったっけ。


わたしが漢字練習をしてると犬なら尻尾を振ってそうな勢いで兄がやってきた。


「翡翠。ほたるって知ってるかい?」


「知ってる。まだそこらの川で漂ってるでしょう?」


ここは良くも悪くも田舎でほたるが呑気にまだいて普通の川にも螢がとんでる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る