――二月十四日、日曜日。
昨日の土曜日が合格発表だった。同じ女子高に、一足早く推薦で入学を決めていた美月に励まされ、春からはこの電車で学校に通いたいんですと念じながら電車に乗り、あたしは一人で発表を見に行ってきた。そして、安堵で泣きながら学校まで帰ってきた。よかった。あたし高校生になれるんだ。美月もだだ泣きだった。あの子、すごくいい子。もう推薦で決まってるんだから、今日なんて学校に来なくても良かったのに、あたしを待ってたいからって登校してきてくれたんだ。高校でも仲良くしたいって心底から思った。
それで今日、合格したらそうしようって決めていたことを一つ、やってきた。馴染みの美容師さんにはちょっと驚かれたけど、最後には、嘘には見えない顔つきで『似合うなぁ。背も高いし、すごくキマってますよ』と言われて、心が浮き立った。
ポニーテールだった髪を切り、いわゆるベリーショートの、男の子寸前の髪型に。
無駄に背が高くて、表情がキツくて、やせ気味なだけでスタイルにもメリハリがない、全体的に棒きれみたいなあたしだって、『女の子』でいたかったんだよ。今までは。
でも、それは変える。
何かのマンガで読んだなぁ。『好きな服が、似合う服じゃないってことは知ってるけれど、やっぱり好きな服で似合うって言ってもらいたいんだもの』だったっけ? うん、今のあたしにはものすごくわかる。わかってしまうから、今日であたしは吹っ切る。
誰にもチョコレートをあげない代わりに、あたしは今日、生まれ変わったんだ。『好きな服』じゃなくて、『似合う服』を着るよ。これまでのことは忘れる。悩みも、苦しみも捨てちゃうんだ。明日からは、高校生活をひたすら夢見て過ごす。高校に入ったら、新しい自分をひたすら楽しむんだ。
だから――
バイバイ、生まれなかったあたしの恋。
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