第94話 配送! 疾走する少女が抱えるは少女への贈り物 (Aパート)
「贈り物は何がいいって?」
みあが訊き返す。
「そんなのあたしが知るわけないじゃない」
「そんなあ、かなみ様と一番仲がいいみあちゃんなら知ってるでしょ?」
沙鳴は言いよる。
「一番仲が、いい?」
そんなこと言われて、翠華は穏やかではなかった。
「大体なんで、かなみに贈り物をするのよ?」
「それはいつもお世話になってるからお礼に、と思って。お給料も入ったし」
「うーん、それだったら現金渡したら?」
みあはテキトーに提案する。
「みあちゃん、かなみさんはそれじゃ受け取らないわよ」
翠華は以前提案して断固として拒否されたことを思い出す。
「難しく考えなくても、かなみさんだったらどんなものでも喜んで受け取るわ」
「そうでしょうか…‥」
「そうよ、なんだったらそのへんの草でもいいんじゃない」
みあはさらにテキトーなことを提案する。
「みあちゃん、さすがにそれは……」
「なるほど! 食べられる野草だったら、かなみさんも喜びそうですね」
「えぇ……」
翠華にはちょっと想像できなかった。
「さ、さすがに、野草はやめておいた方がいいと思うけど」
「そうですね、それでしたらお給料がなくてもいつでも贈れますし」
「いや、そういうわけじゃなくて……」
翠華は反応に困った。
「でも、かなみさんへの贈り物か……」
そういうことをあんまり考えたことがなかった。
「翠華さんだったら何を贈りますか?」
沙鳴が訊く。
「うーん、そうね……」
かなみさんだったらどんなものでも喜んで受け取る。
そう言ってみたものの、いざ贈り物を選ぶとなると難しく思う。
「食べ物は喜びそうだけど、この前サンドイッチを食べてもらったし、アクセサリーだったら何がかなみさんに似合うかつけてみないとわからないし、ぬいぐるみだったら何が好きなのかわからないし」
「む、難しいですね……」
「難しいわね……」
沙鳴と翠華は顔を見合わせる。
「あ~ぬいぐるみだったら、前にアルヒ君とミーアちゃんのぬいぐるみが好きだったって言ったわね」
「アルヒ君とミーアちゃん」は、みあの父親が社長を務めているアガルタ玩具の主力製品で、持っていない女の子はいないほどの人気ある男女ペアの人形やぬいぐるみだった。
「それは知らなかったわ……」
みあは知っていて、翠華は知らない。
その事実に、翠華は落胆した。
「それじゃ、それにしましょうか……」
「そうね、定番なんだし」
「手堅いともいえるわね」
あるみがやってくる。
「社長聞いてたんですか?」
「ええ、自分の会社のオフィスだもの」
答えになってないような返答だった。
「あの……あるみ様でしたら、かなみ様にどんな贈り物をしますか?」
「そうね、現金はいつもあげてるし」
「ええ、そうなんですか!?」
沙鳴は驚く。
「いやそりゃ社長と社員だから給料でしょ」
みあは冷静にツッコミを入れる。
「ああ、そういうことですね」
「マグカップ、とかどうかしらね?」
その次はまともなことを言ってきた。
「あ、それいいですね!」
「意外ね。あるみがまともな意見を出すなんて」
みあは率直に言う。
翠華も思ってはいたけど、口には出さなかった。
「私だってかなみちゃんと一緒にコーヒーを飲みたいって思うときはあるのよ」
「「あぁ、なるほど」」
みあと翠華は納得する。
「なるほど、マグカップですか……」
「コーヒー豆も添えるといいわね」
「参考になりました、ありがとうございます!」
沙鳴は大きく礼をする。
「おはようございます」
かなみがオフィスにやってくる。
元気が無いのか、気だるげに言っている印象がある。
「「おはよう」」
あるみと翠華が挨拶を返す。
「あ、沙鳴来てたの?」
「はい、近くまで来てたので挨拶に」
「ふうん」
「それじゃ、私はこれで失礼します!」
沙鳴は慌ててオフィスを出ていく。
「別にゆっくりしていけないいのに……」
かなみに贈り物についてバレたくなかったから仕方ない、と、みあ達は思った。
「それじゃ、あなたが報告できないでしょ」
あるみが言う。
「あ、そうでした……」
かなみはバツの悪い顔をする。
「あの、すみません……」
かなみはまず最初に謝る。
「ドッペルゲンガーを逃がしてしまいました」
「それで?」
「あ、え、えぇっと……」
かなみは言いよどむ。
「報告は正確にね」
あるみは厳し目に言う。
「……見られてしまいました、魔法少女の姿を」
「貴子ね。あの子、カンが鋭いから」
あるみは察して言う。
かなみの事情は、マニィと感覚を共有しているためおおよそ把握している。
それなのに、かなみに報告させているのはかなみの口から言うことに意味を見出しているからだ。
「はい、貴子に一瞬魔法少女だとバレたかと思って……柏原に眠らせて、もらいました」
「そうね、あれは危なかったわね」
あるみは神妙な面持ちで言う。
「ドッペルゲンガーも逃しちゃったことだし、そういうわけでペナルティーは受けてもらうわよ……」
あるみはそう言って、勢いよく立ち上がる。
「ドッペルゲンガーを逃がしたのは萌実じゃないですか!?」
「ああ、それは連帯責任ってやつよ。萌実はもうペナルティを受けたわ」
「萌実が!? っていうか、連帯責任ってなんなんですか!?」
「ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために、ってことよ」
「意味がわかりません!」
「意味はわからなくてもペナルティを受けるって事実は受け入れなさい」
「嫌です!」
かなみは断固拒否する。
「マジカルドライバー」
あるみはドライバーを出して、かなみへ向ける。
「いやああああああッ!!」
オフィス内にかなみの悲鳴が木霊する。
「かなみ、か?」
それは部活が終わって、偶然通りがかった貴子だった。
「たか、こ……」
カナミは呆然とする。
魔法少女に変身すると、正体を隠蔽する魔法がかかる。
普通の人だったら、魔法少女カナミが結城かなみであることは気づかない、そういう魔法だ。
しかし、魔法が扱えたり、カンの良い人ならわかる、そういう魔法だ。
以前、魔法少女カナミと貴子は会ったことはあるけどその時は暗かったりして気づかなかった。
しかし、今日は明るくて部活が終わったばかりでカンが働くときなのかもしれない。
「お前、かなみか?」
「あ、いや、その!?」
突然のことで、かなみはパニックに陥る。
「…………‥…」
しかし、いきなり貴子はストンと倒れる。
「え?」
「危ないところでしたね」
柏原が言う。
その物言いで、柏原の仕業だとすぐわかった。
「貴子!」
かなみは倒れた貴子の様子を見る。
スースー
呑気そうに寝息を立てている。
「眠らせただけですよ。一応直前の記憶も曖昧になる魔法もかけておきますし」
「……あんた、そういうことできるの?」
「これでも、幹部候補ですから」
柏原は自慢するでもなくごく自然に言う。
ただ、かなみからはちょっとした嫌味に感じた。
「本当に眠ってるだけなんでしょうね?」
「信じて欲しいんですけどね。私はあなたのファンでもあるんですからそのお友達に危害を加えるなんてしませんよ」
「……そう言われても嬉しくないわね」
「あと、これでも私はここでの学校生活を気に入ってるんですよ」
「………………」
それは意外なことだった。
けど、それで今この場だけでも柏原を信じてみようかという気になった。なんとなく嘘は言ってない感じがしたからだ。
「……萌実、ドッペルを逃がしたみたいだよ」
マニィが言う。
「……えぇ」
萌実のあの剣幕だったら確実に仕留めてくれる、と、カナミはそう思っていた。
そうはいかなかったから、落胆が大きい。
「それと萌実はオフィスへ行っちゃったよ」
つまり、マニィが言うにはこの校舎裏には戻ってこないということだ。
「何勝手やってるのよ……」
カナミはぼやく。
でも、このまま萌実と顔を合わせるのは気まずくて重苦しいような気もする。
「このことはちゃんと、あるみ社長に報告するんだよ」
「社長に報告しなくても知ってるでしょ」
「それでもだよ」
マニィは釘を刺すように言う。
その声色はいつになく真剣だった。
「……わかったわ」
だから、カナミは渋々ながら了承する。
その後すぐに貴子は目覚めた。
「おはよう、かなみ!」
などと元気いっぱいに挨拶してきた。
どうやら、前後の記憶が曖昧になっているどころか綺麗さっぱり忘れてしまっているみたいだった。
確認のため、いくつか質問してみた。
「どうしてここで眠っていたの?」「急に眠くなったから」
「眠る前に何か見てない?」「全然憶えてない」
「今日はこれからどうするの?」「帰る!」
そういうわけでいつも教室でしている調子のやり取りをして、大丈夫だとわかったところで別れた。
「あ~か~さ~た~な~」
かなみはぼうっと意味のない言葉を天井を仰いでつぶやいている。
「恐怖のあまり正気を失っちゃったのね、かわいそうに」
みあは楽しそうに言う。
「まあまあ、かなみさんもこれを機にしっかり休んだほういいのよ」
翠華は言う。
「かなみさん、どうしちゃったんですか?」
紫織だけが要領を得ない状態だった。
「きくところによると、かなみはドッペルゲンガーと戦って魔力をめちゃくちゃ吸われたらしいのよ」
みあが説明する。
「それで、かなみは普段の戦いの何倍も消耗したのよ。ほうっておけば魔力は身体の体力と一緒で回復するものなんだけど、あるみはそれだけじゃあきたらなかったみたい」
「と、言いますと?」
「筋トレみたいなものよ。限界いっぱいまでトレーニングすると力強い筋肉がつくっていうじゃない。
魔力も同じ理屈で限界いっぱいまで吸い尽くせばより強い魔力が身につくようになるって、あるみは言っていたわ」
「はあ~それで、かなみさんは体力と魔力を使いきって放心状態なんですね」
「その方がリラックスできてかえってつかれないって」
「それがいいですよ」
翠華が不満を漏らすように言う。
「かなみさんは放っておくと気を張りすぎて、休まらない時が多いんだから」
「は~ま~や~ら~わ~」
かなみはまた意味のない言葉を気の抜けた調子でつぶやく。
「まぬけとふぬけの倍盛りね」
みあは正直にコメントする。
「そういう事言わないの。そういえば、萌実にも同じペナルティを受けたって言っていたけど」
翠華は社長室の方を向いて言う。
「ってことはあいつも、かなみみたいになってるってこと? ちょっと見てみたいわね」
みあは好奇心を抑えられずに社長室へ向かう。
しかし、みはすぐに戻ってきた。
心底つまらなそうに「あいつ寝てた」と漏らしたのだ。
やがて夜が更けた来た頃、かなみと翠華は帰る時間になった。
「かなみさんをこのまま一人で帰らせるわけにはいかないわ」
そう言って、かなみを自分のバイクに乗せる。
「かなみさん、しっかり捕まっててね」
「は~い」
気の抜けた返事だけど、しっかり捕まっていることは感じられた。
(考えてみれば二人乗りなんていつ以来かしら、随分久しぶりな気がするわ)
そう考えると緊張してくる。
「か、かなみさん、い、いくわよ」
ぎこちなく呼びかける。
「は~い」
再び返事をする。
緊張でガチガチになった翠華と対象的に実にリラックスしていた。
ブオオオオン!!
けたたましいエンジン音を立てて、バイクは走る。
あっという間にアパートに着く。
「さあ、かなみさん。着いたわよ」
「れっつごー」
「あ、もう着いたのだけど……」
「とうちゃくですね」
「フフ、そうね」
話すくらいの気力は戻ったようだ。
「今日はゆっくり休んでね」
「は~い」
「本当にね」
翠華は心配して念を押す。
ブオオオオン!!
エンジン音がする。
「あ、かなみ様!」
沙鳴のバイクだった。
「今おかえりになったんですか! 相変わらず大変ですね!」
「沙鳴さん、今帰りなんだ?」
「あ、翠華さんもいらっしゃったんですね」
「い、今気づいたのね……」
翠華は苦笑いする。
「すみません、かなみ様しか目に入らなかったので」
「う……それはちょっとわかるかも」
変なところで共感する二人だった。
「さーなー」
かなみは気の抜けた声で、沙鳴へ呼びかける。
「はい、なんでしょう?」
「おはよう、こさいます」
ペコンと一礼する。
「あ、はい、おはようございます」
沙鳴はかなみの様子に異変を感じ取る。
「あの翠華さん。かなみ様、様子がおかしくないですか?」
「疲れてるのよ、ゆっくり休ませてあげて」
「ああ、なるほど! 疲れてるんですね」
それで沙鳴は納得してくれた。
「それでは不肖私めがお部屋にご案内します!」
沙鳴はかなみの手をとる。
「なな!?」
翠華は「自分さえ滅多にないというのに!」と心の中で叫びを上げる。
「階段にはお気をつけて」
沙鳴はかなみが一段ずつあがるのを落ち着いて待って、ゆっくりとあがっていく。
「……いいな」
翠華は思わず呟く。
しかし、階段を上がるのを甲斐甲斐しく世話をする沙鳴の姿を見て、安心して任せられた。
「私のかなみさんの隣に住んじゃおうかしら?」
翠華はそんなことを本気で考えつつ、アパートをあとにした。
「う~」
朝起きるなり、かなみは唸った。
身体がどうしようもなく重い。
昨日、ドッペルゲンガーに魔力を吸われた上に、ペナルティとしてあるみに魔力を残らず吸いつくされた。そのせいで起きているけど、意識がはっきりしない、夢遊病のような状態になった。
昨日、吸いつくされた後の記憶が無い。どうやって帰ったのか、いつ布団に入って寝たのか。
しかし、今はそんなことを思い出そうとするより、布団から抜けだなさいと遅刻してしまう。
「う~う~」
なんとか抜け出そうと唸る。
「かなみ様、どうしたんですか? う~う~うなって?」
沙鳴が顔を出してくる。
「沙鳴、どうしてうちに?」
「涼美様に呼ばれまして。朝食をご相伴させてくれると」
「朝食!? 朝ごはん!?」
かなみは思いっきり反応する。
「朝ごはんできたわよぉ」
涼美の一言ともに、味噌汁の香ばしい匂いがかなみの鼻孔をくすぐった。
「ごはん! できた!!」
かなみは思いっきり力を込めて立ち上がる。
バフン!!
布団が宙を舞う。
「朝食を食べて~元気をつける~ってよく言うけどぉ、かなみの場合食べる前からぁ元気出るのねぇ、フフ」
涼美は笑いながら感心する。
「朝食って言葉をきくだけで元気が出るけど、食べたらもっと元気が出るわよ」
「そうですね!」
沙鳴は同意する。
「でも、どうして沙鳴を朝ごはんに?」
「昨晩にぃ、かなみをお世話してくれたからよぉ」
「お世話って?」
かなみにまったく憶えがなかった。
「階段を上がったり、扉を開けたり、布団を敷いたり、そのくらいですね」
「めちゃくちゃお世話になってた……」
「かなみ様、よっぽど疲れてたんですね」
「う、うん……よっぽど疲れてたのよ……完全に体力ゼロだった……」
立つ、歩く、返事をする。ぐらいしか出来なかったような気がする。
「というわけで、朝ごはん食べて体力回復よ!!」
かなみは食卓に着く。
今朝の献立は、ごはん、味噌汁、たくわん、そして、焼き鮭……。
「ザ・朝ごはんな定食ですね」
沙鳴は感心する。
「「「いただきます」」」
三人は合掌して、息を合わせて言う。
「朝ごはん、おいしい! これは力がつくわ!!」
かなみは朝ごはんを堪能する。
「たしかにそうですね」
「喜んで~もらえてよかったわぁ」
涼美は手を合わせて喜ぶ。
緩やかに流れる楽しい朝の一時(いっとき)だった
「沙鳴は今日も仕事?」
「ええ、今日も何か運びます」
「何かって何?」
「さあ、わからないんです。守秘義務があるそうなので」
「それって大丈夫なの?」
なにかヤバいものでも運んでいるような気がしてならない。
「大丈夫ですよ、社長さんがよくしてくれてますから」
「そうなの……」
沙鳴の言う社長さんというのがどういう人なのか。ちょっと想像がつかない。
一会社の社長の実例を言うと、かなみはあるみくらいしか知らない。とはいえ、あれはかなり極端だということくらいはわかっている。
(世間一般の社長ってどんな人なのかしらね……?)
きっとヒゲを生やしたおじさん。そのくらいしか、かなみには想像できなかった。
「かなみ様のところの社長様もすごいじゃないですか」
「あの人はすごすぎるのよ」
「そうよねぇ、あるみちゃんはぁ強烈だものねぇ」
「強烈さでいえばお母様もいい勝負だと思いますよ」
「それはたしかに」
かなみは同意する。
「照れるわねぇ」
涼美は喜ぶ。
「それって褒め言葉なのね?」
かなみは甚だ疑問だった。
「沙鳴はこれから仕事?」
外に出た沙鳴は早速バイクにまたがる。
「はい、お給料日が近いですから」
「あ、そうなの。私はずっと先だからうらやましいわ」
「お給料が入ったら、何か御馳走しましょうか?」
「いいわよ」
かなみは遠慮する。
「沙鳴は沙鳴の借金があるんだから、少しでもたくさん返していかなくちゃ!」
「そ、そうですか……」
「まあ、それでも少しくらい贅沢してもバチは当たらないと思うけどね。」
かなみは笑って言う。
「……贅沢ですか。なんていいますか、今日の朝食がすごく贅沢な感じがしました」
沙鳴にそう言われて、かなみは「そうかもね」と同意する。
魔力を残らず吸い取られたせいで、身体がとてつもなく重い。
朝布団から起きるのにも一苦労したくらいだ。
いわゆる魔力の筋肉痛みないなものかしらと、かなみは思った。
魔力を使い果たすといつもこんな感じなのだけど、今日は一段と重い気がする。
軽い風邪よりよっぽど身体が重い。
今日は休んだほうがいいかもしれない。そう思った時「休んだらどうなるかな」とマニィが釘を刺すに言ってきた。
そんな感じの重たい気分で、かなみは登校して教室に入る。
「今日はギリギリじゃなかったんだな」
貴子が言う。
「私だって、たまには早起きくらいするわよ」
「そのわりにはなんかだるそーに見えるけどな」
(鋭い……)
かなみは心の声でぼやく。
「うん、ちょっと筋肉痛で」
「そういえばジム行ってるんだったな」
「う……そ、そうなのよ」
前にそうごまかしていたことを突きつけてくる。
(本当は事務仕事なのに……)
貴子のことだからすぐ忘れると思っていたのが誤算だった。
これは、そのうち嘘だったと打ち明ける必要があるかもしれないと、かなみは思った。
「そういえば、貴子は昨日どうだったの?」
「昨日って何が?」
「校舎裏で寢っちゃってたじゃない?」
かなみは確認する。
柏原の魔法の効き目は、一晩経っても効き続けているのか。もし、効果が切れていたら一大事なのだから。
「え、ああ、あれか。全然憶えてないんだよな」
貴子のその返事を聞いて、一安心する。
「でもなんで、かなみはあそこにいたんだ? 先帰ったんじゃなかったのか?」
「わ、忘れ物をとりにいってたのよ」
「ふうん……かなみはぼうっとしてるからな」
そう言われて、かなみはムッとする。
実際昨晩はぼうっとしていたけど。
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