第32話 強襲! 少女を誘う悪魔の招待! (Bパート)

 かなみの絶叫とともに吊り橋を支えるロープが切れる。

 それとともに支えていた足場が崩壊して、谷底へと落下する。

「きゃあぁぁぁぁぁッ!!」

 かなみ、翠華、みあ、紫織の四人が悲鳴を上げる。

「こんなところで死ねるかってのよ!」

 その中で、みあは一人気を吐く。

 変身して、ヨーヨーを投げ縄のように投げる。

「紫織、しっかり捕まりなさい!」

「は、はい! 絶対離しません!!」

 投げたヨーヨーは向こう岸の木に絡まる。

 そのおかげで落下は止まった。

(みあちゃんは助かった! それだったら、私も!)

 それを目にしていたかなみは勇気づけられた。

「マジカルワークス!」

 カナミは変身してみせる。

「だぁぁぁぁぁッ!!」

 それでも、お決まりの口上を言うことはできなかった。

「か、カナミさん!?」

「翠華さん、私に捕まってください!」

「う、うん!」

 翠華はカナミをギュッと抱きしめる。

(私はみあちゃんみたいなことはできないけど! 助かるために!)

 カナミは極限状態から無い頭を振り絞る。

「神殺砲!」

 ステッキを大砲へと変化させる。

 それを谷底へと撃つ。


ドォォォォォン!!


 神殺砲を撃った反動と爆発で巻き上がった爆風により、落下速度が緩和される。

(これなら、なんとか!)

 カナミは足に魔力を込めてクッションをイメージする。


ボスン!


 ソファーに飛び込んだ時のような音が鳴る。

「で、できた……」

 上手く着地できた。

 身体を確かめてみてもどこにも怪我はない。

「翠華さん、大丈夫ですか?」

「う、うん……!」

 翠華はカナミの顔を見上げる。

「あ、あッ!」

 そこで翠華は我に返って、とんでもない体勢になっていることに気づく。

「ごめんなさい!」

 翠華はカナミからすぐさま離れる。

「大丈夫、私は大丈夫だから……!」

「そ、そうですか。それはよかったです」

 カナミはニコリと笑う。

 そのカナミの笑顔にドキリとさせられる。

(私ったら何してるのかしら……? カナミさんを守るのは私だと思っていたのに、逆に守られて……)

 そんな翠華は自分を恥じた。

 そのせいで、カナミをまともに見ることができない。

「あんな高いところから落ちたんですね」

「え、え?」

 カナミの視線を追って、翠華は見上げる。

 魔力を使ってようやく落ちたところの崩れた吊り橋が見えるほどに高い。

「確かに高い……」

「上っていくのは辛そうですね」

「え、上るつもりなの?」

「いえ、そんなわけないじゃないですか! 迂回して合流できないかなと思いまして」

「そうね……」

 どうにかして合流しないと、翠華は緊張する。

「その必要はないわ」

 スルスルとゆっくりチトセが降りてきた。まるでロープに捕まってゆったりとするかのように。

「チトセさん、どうして?」

「振り分けよ。あんた達、二人じゃ心もとないし」

「振り分けってどういうことですか?」

「私達三人で別ルートから攻めるってことよ」

「べ、別ルート……」

「別に上っていってもいいんだけどね。この崖を上がっても私は全然問題ないけど」

「この崖を上るって……」

 翠華とカナミはもう一度見上げる。

 この崖を上るということは半ばロッククライミングをするということだ。

 普通の人間ならまずできないことだが、カナミ達魔法少女なら魔力で身体能力を上げればそうそう難しいことではない。

 ただ、この身体能力の強化によって魔力を消耗してしまう。

(仮に合流出来たとしても、魔力が消耗した状態じゃまともに戦えない)

 そして、まともに戦えない状態の自分達をあるみがかばってくれるほど甘くない。

「かなみさん、この崖を上って合流するか、私達だけで秘密基地を攻めるか……」

「二つに一つですね」

「私は、このまま秘密基地を攻めるべきだと思うけど」

「私もそうするべきだと思います。翠華さんも同じ考えなら頼もしいです」

「そう……私も頼もしいわ」

「あんた達、いい二人組ね」

「こ、二人組……」

 翠華はその言葉を聞いて、狼狽する。

「別の言葉を使って欲しかった?」

「そうですね、コンビとかそういう感じのものがいいですね」

 カナミはそう言う。

「そういうことじゃないと思うけど」

「じゃあ、どういうことなんですか?」

「い、いえ、それは……」

「さあ、さっさと行くわよ。道順はあるみから聞いてるから大丈夫よ」

「はい……」

 チトセの後をついていく。




「ヨーヨーをロープ代わりに使うなんて、とっさの判断にしてはよかったわよ」

「偉そうなこと言ってないで、早く引き上げなさい! こちとら、こんなの初めてなんだから!」

「はいはーい、萌実ちゃん。引き上げてね」

「ちょ、なんでそこでそいつにやらせるのよ!」

 文句を言うみあを無視して、萌実はため息をつく。

「私だって、なんでこんなことを……?」

「ああ、ちょっと離したら承知しないからね」

「はいはい、そんなに離してほしかったらお望み通りに♪」

「あ、コラッ!」

「フフ、楽しいわね」

 傍目から見ているあるみは微笑ましく見守る。

「本当に離して承知しないのは誰なのかしらね」

 萌実はイタズラっ子の笑みを浮かべて、あるみに問いかける。

「確かめてみるのもいいじゃない?」

「そんな度胸はないわね」

 萌実はそう言ってヨーヨーの糸を引く。

「た、助かりました……」

 紫織は息を上げて、生きている実感を確かめている。

「ちゃんと引き上げてあげたわよ」

 萌実は得意気に言う。

「当然よ! それで、かなみ達はどうなったの!?」

「落ちたわ」

 あるみはあっさりと答える。

「――はあ!?」

 みあは谷底を見つめる。

「ちょっと、こんなところから落ちて無事なわけ?」

「無事でしょうね。あの娘がこの程度で死ぬと思う?」

「そうね。死なないわね、しぶとさならあたしより上だし」

「そういった意味じゃあんたより上なんじゃないの、あるみ?」

 萌実は嫌味ったらしく言う。

「かもね」

 あるみは満足気に答える。

「さあ、私達は私達で行きましょうか」

「かなみは助けないの?」

「助ける必要ないでしょ。彼女達は彼女達で頑張るから」

「でも、怪我とかしてたら」

「その時はその時よ。自分でなんとかするでしょ」

 あるみはそう言って背中を向ける。

「なんだか、あるみ社長。冷たいですね」

 紫織はみあにそう言った。

「そう? むしろ、暑苦しいくらいなんじゃないの」

「何が、ですか?」

「自分で考えれば? わかるでしょ?」

 みあはそれ以上、紫織の言うことに耳を貸さず、あるみについていく。

「わからないですよ……」

「わかるようになりなさいよ。でなきゃ死ぬわよ」

「え、えぇ……」

 萌実に忠告されて余計に戸惑う。

 それでも、紫織はみあやあるみについていった。




 山道をひたすら歩いた。

 数時間、歩いてもまだ目的地には辿り着けない。

 これが普通の山登りだったら、間違いなくヘトヘトになっているところなのだが、カナミ達は魔法少女で、荷物もほとんど持っていない。

 そのため、ほとんどつかれていないのだが。

「み、みず……」

 さすがに水分補給ができないのは辛かった。

「だったら、そこの川の水でも飲みなさいな」

 チトセはそう言って近くを流れている小川の水を指す。

「お腹を壊します」

「いえ、今はそれでも欲しいです」

 カナミは小川に歩を進める。

「ダメよ、カナミさん! いくらカナミさんがひもじい想いをしているからってあの水を飲んだらダメよ!」

「わ、私、そんなにひもじい想いしていませんよ」

「しょうがない。ろ過ぐらいはできるから一休みしましょう」

「え、ろか……?」

 ひとまず、カナミ達は小川のほとりで座る。

 チトセは魔法で縫い合わせた布を取り出して、土を入れる。

「カナミちゃん達は川の水を汲んできて」

「え、でも、水を入れるものがありませんよ」

 今のカナミと翠華はほとんど手ぶらで、水を汲めるものが無かった。

「だったら、あの大砲に入れたら?」

「ええ!?」

 チトセの言う大砲というのはもちろん、神殺砲のことであった。

 たしかにあれで水を汲めば問題はなさそうだ。

「でも、あれって武器なんですし……そういう使い方は……」

 そう、今まで神殺砲は敵を倒すために使っていた砲撃の魔法であった。

 だから、その使い道も戦いで敵を倒すために使うことしか無かった。それしか使いみちを考えたことがなかった。

「武器だけど、どう使うかは持ち主の考え次第よ」

「考え次第、ですか……」

「たとえば、さっきの神殺砲だって、カナミちゃんは地面に向かって撃ったじゃない。あれだって敵を倒すために撃ったわけじゃないでしょ」

「あれは無我夢中でやっただけですよ、助かりたくて」

「それと同じ感覚よ。そう身構えなくても良いものなのよ、魔法っていうのはね」

 カナミは沈黙する。

 考えさせられる助言であった。

 カナミは今まで神殺砲を敵を倒すために使う魔法だと、無意識のうちに身構えていた。

「まあ、そう身構えることなく、まずは大きな水筒だと思って使ってみなさい」

「は、はい、やってみます」

 カナミは小川の方でステッキをかざす。

「神殺砲!」

 カナミは高らかに一声上げる。

 すると、ステッキは大砲へと変化させる。


バシャーン!!


 小川に水しぶきが上がる。

「よいしょっ、と!」

 かなみは両腕を振って、大砲で大量の水をすくい上げる。

「これはさすがに入れすぎ……かしら?」

 カナミは苦笑いする。

「まあ、足りないよりかはいいわよね。お金もこれぐらい簡単に手に入ったら良いのに」

 カナミは大砲を担いでチトセの元へ戻る。

「おお、大量じゃない」

「それがろ過装置ですか?」

 布をかぶせてその上に砂利をのせている。

「そうよ。昔はよくこれで飲水を確保したわ」

「昔って、何年前ですか?」

「知りたい?」

「べ、別に、知りたくありませんよ」

 カナミはそっぽ向いて、大砲をろ過装置に注ぐ

「ゆっくりやりなさいよ」

「わかってますって。でも、入れ物はないじゃないですか」

「ああ、それならそろそろスイカちゃんが持ってきてくれるわ」

「持ってきました」

 スイカはそう言って竹筒を差し出す。

「近くにいい竹がありましたよ。レイピアで切ればいい水筒になります」

「え、ちょっと待ってください! それに水を入れればよかったんじゃないんですか!」

 カナミはチトセへ抗議する。

「わざわざ神殺砲まで使わなくてもよかったじゃないですか、はあ……」

「ガタガタ言わないの。大砲にもそういう使い方があるってわかっただけよかったじゃないの」

 チトセはフフッと笑う。

「チトセさん、慣れてますね」

「まあね。昔はこういうことばっかして命をつないでいたからね」

「だから何年前の話ですか、それ?」




「チトセちゃんがいるから心配することないわ」

 あるみはみあにそう言った。

「だから、あたしは心配してないって!」

「とか言いつつ、さっきから何度も後ろを振り向いてるじゃないの」

「こ、これは。後ろから敵が来ないか警戒しているだけよ」

「あはは、すぐバレる嘘つくなんて可愛いわね」

「う、嘘じゃないって!」

「みあさん、可愛いです」

「あ、あんたも余計なこと言わないの!」

「みあちゃんと紫織ちゃんもいいコンビね」

 あるみは二人を引率している保護者みたいな気分で微笑ましく見守る。

「じゃあ、私はあんたとコンビってわけ?」

「あ~それ無理ね。あなたと私じゃつりあわないもの」

 それを聞いて、萌実は顔をしかめる。

「それは、あいつじゃなければ、って意味?」

 あるみはビクッと背中を僅かに震わせる。

「そういう意味じゃないわよ。私のコンビは来葉って昔から決まってるのよ」

「昔っからね、つくづくムカつく女ね……」

 萌実は舌打ちする。

「まあ、あなたならアシスタントぐらいになるわね。よろしくね!」

 あるみは萌実の背中を叩く。

「アシスタントって……どこまで、苛つかせる奴なのよ、あんたって人は……!」

 萌実は歯ぎしりして拳を震わせる。

「ほら、もうすぐ基地よ。カナミちゃん達がつく前に壊滅させちゃいましょうか」

「元からそのつもりよ! あたし一人で十分よ!」

「みあさん、過信は禁物ですよ」

 紫織がみあを諌める。




 小高い丘に登ってカナミ達はネガサイドの秘密基地を一望する。

 秘密基地というより工場といった様相で緑溢れる山々に囲まれた盆地に、いきなり出現したかのような異空間を感じさせる。

「水はちゃんと計画的に飲みなさいよ。もう補給はできないんだから」

 チトセが警告する。

「まるでおばあちゃんみたいですね」

「まあ、水は大事ですよ。空腹はどうにか我慢できますけど、脱水はどうにもなりませんから」

「カナミさん、凄い説得力ね」

 スイカは苦笑する。

「もうすぐ、基地よ。カナミちゃん、よろしくね」

「任せて下さい! チトセさんが査定交渉に加わってくれれば頼もしいですから!」

「でもカナミさん、大丈夫なの? もう一発撃っているし、結構魔力を消耗しているんじゃない?」

「大丈夫ですよ、これぐらい!」

 カナミはステッキを大砲へと変化させる。

「新しい魔法で、一気に殲滅してやるわ!」

「新しい魔法?」

「この前、ヒントをもらいましてね。まあ、見ていてください」

 カナミはステッキの輪を飛ばす。

「神殺砲!」

 ステッキを大砲へと変化させる。

「輪を飛ばしながら、神殺砲!?」

 今までみたことがない戦い方だ。

 あの輪を飛ばして魔法弾を撃つだけでもかなりの集中力を使うとカナミは言っていた。

 それを大量の魔力を集中させる神殺砲と同時に使うなんて。

「まだ、実戦で使えるか微妙なところなんですけど!」

 カナミは魔力を神殺砲へと注ぎこむ。

「え!?」

 しかし、それだけではなかった。

 飛ばした輪にも魔力がみなぎっていた。

 目を凝らすと、大量の魔力が三つの塊が出来上がっているのがわかる。

「かなみさん、まさか……!」

 そのまさかです! と言わんばかりにカナミは撃つ。

「ボーナスキャノン!! イノ!」

 特大の魔法弾が撃ち出される。

「シカ! チョウ、アラシッ!」

 小気味の良い掛け声とともに残り二つの魔力の塊を撃ち出す。


バゴーン!!


 工場の煙突や建物が倒壊する。

「あ、あれだけの魔力の弾を一気に三連発だなんて……」

 スイカは唖然とさせられる。

「まったく、大した成長だわ。私の若い頃を思い出すわ」

「だから、発言がおばあちゃんなんですよ」

 息を切らしたカナミはぼやく。

「大量の魔力を分散させて溜める。一箇所に集中させると魔力が散りやすいからより高い集中が要求される。ああして魔力溜めを輪に任せるのも合理的なのよね」

「それでもチャージに時間がかかってしまうし、輪に魔力を回さないといけないから三倍の集中が必要でけっこう難しいですよ」

「確かにもっと練習は必要ね。でも、練習さえすればモノになるわ」

 チトセはカナミの肩を叩く。

「いい狼煙が上がったし、ここからが本番よ」

「まだまだへばっていませんから!」

「ボーナスのためにもね」

「はい!」

 カナミは奮起して基地へと向かう。

「わ、私も!」

 スイカも慌てて後を追う。




「あ~、先に着いちゃったか」

 煙が上がっているのはあるみは眺める。

「ね、カナミちゃん達は無事だったでしょ」

「あたしは別に心配してないって!」

 ミアはフンと鼻を鳴らす。

「じゃあ、私達も負けずに頑張りましょうか」

 あるみは張り切って変身する。

「白銀しろがねの女神、魔法少女アルミ降臨!」

「あんた一人でやってなさいってのよ。こちとら味方に銃を向けなくちゃいけないんだから」

「あなたが味方だなんて殊勝な心がけするタマ?」

「む!」

「あなたのそんなヘナチョコ弾で倒れるような怪人ばっかりだったら楽すぎて話にならないってことよ」

「ホント、あんたってどこまでムカつかせりゃ気が済むのよ」

 モモミは銃を構える。

「私の弾がヘナチョコか……その目で確かめてみなさいなって!」

 モモミの放った銃弾が基地の塔へと当たる。


バゴーン


 塔が爆発して崩れ落ちる。

「こっちも狼煙を上げといてあげたわ。さっさと行くわよ!」

 モモミは単身突っ込んでいく。

「さすが、血気盛んね。あなた達ものんびりしてると見せ場を全部もってかれるわよ」

「もってかれてたまるかってのよ! いくわよ、シオリ!!」

「は、はい!」

 ミアはヨーヨーを持ち、シオリはバットを携えて突っ込む。

「若いって良いわね」

 アルミは腰に手を当てて気分良く言う。

「まあ、私も十分若いし、引退なんてしてられないのよね!」




 スイカはレイピアで怪人を突き刺す。

 これで三人目を仕留めたことになる。

 しかし、基地にいる怪人は次から次へと押し寄せてくる。

「さすがです、スイカさん! ですが!」

 カナミも負けじと怪人に魔法弾を喰らわせる。

「カナミさんもさすがよ」

「私はこの戦いでたっぷりボーナスをもらう予定ですから!」

 カナミは輪を飛ばす。

「ジャンバリック・ファミリア!!」

 ステッキから飛ばした輪から大量の魔法弾を撃つ。

 敵を残らず平らげるかのように殲滅する。

「すごい……カナミさん、魔力を相当消耗しているはずなのに……」

 しかも、まだまだ余力があるように見える。

(カナミさん、どんどん強くなっている。私が守って必要がないぐらい……でも、でも!)

 スイカはレイピアを握り締める。

「ハァッ!」

 そのレイピアを怪人へと突き刺す。

「カナミさん、背中が隙だらけよ」

「スイカさん、ありがとうございます!」

 カナミとスイカは自然と背中合わせになる。

「背中なら私に任せて、カナミさんはどんどんやっちゃって!」

「はい! スイカさん、背中お願いします!」

 カナミは神殺砲を前方へと砲身を向ける。

「ボーナスキャノン!!」

 視界に入る敵を残らず魔力の洪水で飲み込んだ。

 しかし、敵はまだ奥の建物や地面からゾンビのように湧き出てくる。

「まだまだ敵はいるわね」

「上等です! それだけボーナスも期待できます!」

 カナミの前向きさが何よりも頼もしい。

 カナミは神殺砲に魔力を注ぎ込む。

「もう一発行きます!」




 凄まじい轟音と地鳴りが鳴り響く。

「これは神殺砲の衝撃ね!」

「凄いです……ここまで届くなんて……」

「あのバカのバ火力なら当然でしょ」

「ミアちゃん、バカバカ言い過ぎです」

「バカだからバカって言ってるのよ。どうせ怪人倒した分だけボーナスが出るって後先考えずに張り切ってるんでしょ」

「そうですね、カナミさん頑張り屋ですから」

「あたしも負けてられるかってのよ」

 ミアはボソリと言う。

「え、何か言いましたか?」

「あいつのボーナス根こそぎとってやるって言ったのよ! ほら、ボサボサしてないの!!」

「ミアちゃん、もっと素直になりましょうよ」

「あたしほど素直な子もいないわよ」

 ミアはそう言ってヨーヨーをぶん投げる。

 そのヨーヨーは怪人は頭を割り、倒される。

「スイングヒット!」

 その一方で、シオリのバットは怪人をかち割る。

「そんな大味で大丈夫なの?」

 モモミはほくそ笑むように二丁拳銃を次々と撃つ。

 一発一発が怪人の頭を正確に貫き、倒れる。

「顔に似合わず繊細ね」

 アルミは感心しつつ、怪人をドライバーで一突きする。

「誰かと違って大雑把にやって倒せるほど強くないからね」

「生意気言うのは十年早いわよ」

「二十年の間違いでしょ。年増さん」

 モモミは嫌味を言ってやって、振り向きざまに銃を撃つ。

「訂正させてもらうわ」

 それを見てアルミは微笑みながら、また怪人を一突きして仕留める。、

「百年の間違いよ」

「ああ、確かにあんたに追いつくにはそれぐらいかかりそうだし」

「いいわね、目標は大きい方がやりがいがあるわよ」

「自分で言うかっての! いつか絶対にそのニヤケヅラに鉄砲玉食らわせてやるわ」

 モモミはそう言って、銃を撃つ。

「そう、それでいいのよ」

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