第3話 マリヤの面接

「失礼いたします」

「どちら様ですか?」

「マ、マリヤ・アングリャーナと申します」

「どうぞ」


あ。マリヤが入っていった。マリヤは緊張しやすいからなぁ。大丈夫かな? そんなこと言ってるあたしも次なんだけど。

 ここは王子の書斎前。面談は王子の書斎でやるらしい。自称「怖いもの知らず」のあたしだけど、少しばかり怖くなってきた。だって、次期王様と一対一で話すんだもの! 怖くないわけがない。マリヤがつけてくれた装身具はきつくて仕方ないし……。うぅ――。


     *     *     *  


「こんにちは、君がマリヤさんだね? 僕は、カラリウ」

「カ、カラリウ様、よろしくお願いします!!」

「そんなに気張ることないよ。もっと気楽に。敬語、苦手なの? ため口でもいいけれど」


私は体が急に熱くなるのを感じた。特に、顔が熱い。ど、どうしよう!?


「あ、あの、そんな、恐れ多いですわ」


頑張ってこう答えることには成功した。はあ……。一安心。

 でも、どうしよう。こんなの聞いてなかった。かなりのイケメンだって話とか、紳士のような人とか、そういう噂はあの田舎町でも聞いてたけど――こんな、魅力的な人だなんて!! 思いもしなかった。カラリウ様は予想以上にかっこよく、お優しく紳士的で、いるだけで千人ぐらいの人を魅了させるほどだった。


「君って、確か双子だよね? 双子でいるのってどんな感じ?」

「失礼ながら、質問させていただきます。カラリウ様は、何人兄弟でいらっしゃいますか? 後、私は双子じゃないのがどんな感じかもわからないのですが……」

「僕は一人っ子だよ。一人っ子でいると、一人で遊ばなきゃいけないし、寂しいんだ。僕は人見知りで友達も少ないし」


カラリウ様の表情が心なしか寂しげに見える。いけないこと言っちゃったかな、私。


「双子は、強い結びつきが持てます。親友よりも家族よりも強いものが。でも、それが良いとはあながち言い切れないことも確かですよ」

「慰めてくれなくても大丈夫だよ。今度も双子のことについて聞かせてくれ」

「喜んで」


 私はもやもやしていて、それでいて何か浮かれた気持ちで書斎から出た。



「マリヤーー、ねえねえ」

「誰?」


ささやき声が聞こえる。なんだかリュアの声に似ている。声のしたほうを振り返ると、


「リュア!? あなた何でここに?」

「しーっ、ここではリュイなんだから」

「……どういうこと?」

「えー? だから、いとこのリュイもね、当選したの! でもリュイ行きたくないって。ちょうどリュアも行きたかったんだー、ここに。だから来ちゃった! あははっ」


笑い事じゃないわよ。さすがリュア、というところだけど。


「リュイの面談っていつ?」

「え、明日だよ?」

「じゃあ、頑張ってね?」

「うん、じゃねー」


私たちが別れを告げたころ、シャナの面談が始まった。

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