第2話 馬車の中で

「シャナー!! 何か良く分からないんだけれど、私たち、明日王子様と面談するらしいわ」

「……面談? どーいうこと?」


王都に向かう馬車の中。あたしとマリヤはおんなじ馬車だ。 


「うん。兵隊の方に聞いたんだけどね、『選ばれし三十人』は、明日から一人ずつ王子とお話しするんだって。で、私たちは一番最初らしいわ」

「ふぅん。それ、何の意味があるの?」

「…………は?」


なぜかマリヤが固まった。あたしとしては率直な感想を言っただけなのに。


「マ、マリヤ? 大丈夫?」

「シャナが天然でおバカなことぐらい私もわかってたはずなのに……。確かにこの シャナが意味を分かるわけがないか――」


何ぶつぶつ言ってるんだろう? 本当に大丈夫か心配になってきた。


「と、とにかく、忘れちゃだめよ? 分かったわね?」

「わ、分かったよ」


あたしも王子様がどんな人かってことには興味ある。うん、明日が楽しみになってきた!!

 そのことを告げると、マリヤは安心したような笑みを浮かべて、 


「だから、シャナの着付け、手伝ってあげるわね?」

「う、うーんと、別にいいよ?」

「それはつまり、やっていいよって事ね?」

「いやいや、遠慮しますって事だから!」

「ふふふふふっ」


マリヤに笑われた。腹立つなぁー。

 そんなあたしたちを馬車は運んで行った。王子と温室の待つ王都まで。


*     *     *     *     *     *     


「私わたくしの温室にはどんなお花が必要かしら? 純粋なスイレン、可愛らしい桜草はもちろんだけれど、サルビアやカタクリの花なんかも良いわね。あ の子にふさわしい娘を探すにはそのぐらい必要よ」


王宮でそう呟く者がいた。


「醜い争いを乗り越えられたものでなくては。わたくしが見たいのもあるけれどね」


彼女は残忍な笑いを浮かべながら言った。彼女――王妃――は壊れたような笑い声をあげ、遠くを見つめた。

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