田舎娘の王宮暮らし

サラ・ローズマリー

第1話 厄介な誕生日プレゼント

「シャナ、誕生日おめでとう!」

「マリヤ、あんたもね」


今日は私たち二人の誕生日。十五歳になる。私たちは王子と同い年だ。何でそんなことが大事かっていうと……。


「シャナ、マリヤ!! 明日だよね? 運命の日は」

「うん!」


王子と同い年の女子は、王子と結婚できる可能性があるからだ。王子が十五になる日に都市の中から二人,花嫁候補がくじで選ばれるのだ。そして、明日が王子の十五歳の誕生日!!


「ああ、まだかなぁ……。早く王子に会いたいっ」

「リュアったら……。まだあなたが選ばれたわけじゃないんでしょう?」


幼馴染のリュアは、昔っからイケメン好きだ。チョコレート色の髪の毛が魅力的で、この街一番のモテる女の子だ。


「でも、私昔から運良いんだから~。きっとなれるわよ! あなたたちの分も祈っとこうか?」 


私とシャナはそんなリュアに呆れたような笑みを向けた。本当にリュアは自信過剰だ。そんな自信に敵うほどの実力を持っている彼女が羨ましい。


「遠慮しとくわ」


シャナと私は異口同音に答えた。おそらく、その言葉に込められた思いも同じだろう。そう推測しながら、相変わらずのリュアを見る。


「遠慮しなくってもいいのに。それに、私王子様に会ったことさえあるのよ? 運命の出会いに違いないと思うの」


そんなにキラキラした目で見なくっても良いのに。ほんっとに楽天的なんだから。早くこの会話、終わらせちゃいたい。


「えぇ、そうね、リュア。悪いけど、誕生日のケーキが待ってるから行くね?」

「えぇー? 分かった。明日、最高のプレゼントあげるねー!!」

「え? あ、うん。わかったわ」


最高のプレゼントが何なのか、私たちはまだ知らなかった。


      ※     ※     ※          


「マリヤ? 何でこんなに人がいるの?」

「シャナ!? あんた、忘れたの? 今日は『運命の日』じゃない!」


あぁ、そうだった……。マリヤやリュアと違って、あたしはあんまり王子様に興味ないからなー。つい忘れちゃう。


「シャナ、早くくじ引き広場に行かない?」

「あたしは良い。面倒だし」

「あー、もう! シャナが興味ないのは知ってるけど、十五歳の人は行く義務があるんだって……」

「分かった、分かった……。行くってば」


マリヤはお母さんみたいだな、とつくづく思う。あたしたち二人には両親がいない。そのせいか、マリヤはお母さんっぽくなってしまったのだ。

 だからってあたしが子供っぽくみられるのもどうかと思うけど。


「ふぅ。やっと着いたわね」

「疲れたー」


広場は人だらけで身動きがとれなさそうだ。あたしは自由を愛してるのに。


「シャナ、マリヤー。やっと来たの? 遅いなぁって思ってた」


リュアが来た。なんだか珍しく質素な感じの服だ。


「王子様に会えるって、派手な格好するんじゃなかったっけ?」

「派手な格好ってひどい!! 予定が変わったのよ」

「シャナ。派手はないんじゃない?」


現実を言っただけなのに……。何であたしが怒られなくっちゃならないんだろう。世の中って不公平。


「そ、それより、どう予定が変わったの?」

「え? んーと、あなた達に誕生日プレゼントあげるからだよ?」


ぞわっと鳥肌が立ち、嫌な予感がする。


「それってつまり……」

「うん! あなた達には王子様をプレゼントしようと思ってー。必死に祈っといた」


何そのプレゼント!! いらないんだけど。


「来て良かったね、シャナ」

「うん、全然良くなかった」


何でそんなにキラキラできるの? あたしの心が悲痛な叫びをあげるが、誰も気づいてくれない。うぅっ……。


「それでは今よりぃ、くじ引き会をぉ、始めるぅ!!」


アナウンスが流れる。不思議なしゃべり方のおじいさんだな。


「では、一人目っ。マリヤ・アングリャーナ嬢!」


くじ引きをするのが早いなっていうか、本当に、マリヤが選ばれちゃってるし! やっぱり二人目は私なのかな? 


「二人目は、シャナ・アングリャーナ嬢! 珍しいことにぃ、双子でぇ、当選です!」


ああ、終わった。町の人たちが「アングリャーナ兄弟に勝利を!」などと叫んでいるがはっきり言ってどうでも良い。


「ね、だから言ったでしょ? 最高のプレゼントあげるって。頑張ってきてねー」


リュアが嬉しそうに話しかけてきた。


「うん、ありがと。じゃあね」


 そう適当に返してから、王都へ向かう馬車に乗るまでの記憶は一切ない。

 つまり、それだけ最悪だったということだ。

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