九話 能力が解放されたようです


「また負けちゃった〜」

ルミリアは言う。

「まぁねルミリアには負けられないからね

でも前とは比べられないぐらい強くなってるから結構ギリギリだよ」

俺は本心を告げる。

「そう?」

ルミリアは嬉しそうに頬を赤くしている

「お腹も空いたしご飯食べに帰ろうよ」

俺が言うと

「うんっ私もお腹ペコペコだよぉ」

俺とルミリアは村に向けて歩き出す


帰る途中に村の見回りのセルコルさんが

血だらけで倒れていた

「大丈夫ですか⁉︎」

俺とルミリアはセルコルさんに駆け寄る

「村長の所まで…」

喋るのも辛そうだ

「ルミリア!村まで連れて行くぞ!」

そうして俺とルミリアはセルコルさんの

両脇に立ち二人で抱える様にして村に帰った。


「おいっ!何があったんだ⁉︎」

村の人達が駆け寄ってくる

「村長を呼んでください!一大事です!」

するとすぐに村長と共に父さんと母さんが

やってくる。

「何があったんだ⁉︎」

村長は尋ねる

セルコルさんは信じられないことを喋り出す

「ドラゴンが…ドラゴンがいました…しかも

邪竜です」

その言葉を聞いて村の人達は騒ぎ出す。

邪竜とは、悪の化身で

生物を見つけた途端に襲いかかってくる暴竜で

人族や他の種族の村や町はもちろん

国まで滅ぼしたこともある

上位種のSSランクのドラゴンだ。

村長はまた尋ねる

「今邪竜はどこにいる?」

「村から西に2Kmぐらいだと思います」

それを聞いて村長は村全体に指示を出す

「逃げるぞ!村からすぐに出発だ!」

その時村の近くで嫌な声が聞こえた。

「グヴァァァァァァァァァァァァァァ‼︎‼︎」

村から目で見える程の距離まで邪竜が

攻めてきていたのだ。

村長はまた村全体に指示を出す

「村の女達はすぐに逃げろ!残った男達で

時間を稼ぐぞ!」

村の女性達はすぐに逃げ出す。

「お前もいけっ!」

父さんに背中を押される

「嫌だ!俺だって男だ!守りたいものもある!

俺も戦う!」

「馬鹿を言うな!お前はまだ子供だ!

お前に何が出来る!」

父さんの怒号が鳴り響く。

「嫌だ!嫌だ!嫌だ!」

だんだんと、邪竜はこちらに近づいてくる。

「わかった!だが絶対に前に出るなよ!

お前は後ろから魔法を撃つだけだ!

危なくなったら絶対に逃げろ!わかったな!」

「うん!」


しかし邪竜は圧倒的だった

一撃で戦士の7割が瀕死の重症を負ったのだ

無理だ…勝てるはずがない。

戦士ですら一撃でやられた

かといって逃げ切るのも不可能。

「死んだな…俺」

そんなことを考えていると

ドラゴンの後ろに見たことのある

美少女を見つけた……ルミリアだ。

俺の体は勝手にルミリアの方へと走り出す

「あのバカッ何やって!」

俺が走り出した直後

邪竜は口から魔力の塊を地面に向けて放つ。

すると爆発が起き村全体に爆風となって

襲いかかる俺やルミリアはもちろん

村の戦士たちも吹き飛ばされる

「グハッ!」

俺は壁に勢いよく背中から叩きつけられる

なんとか意識はある様だ…

俺はもう一度ルミリアの方へと走り出す

すると木に叩きつけられ頭から血を流している

ルミリアを見つけた。

「ルミリア!なんでここにいる!」

俺が言うと

「私はセラフィに守られるだけじゃ…

ダメだって思って…」

ルミリアは口から血を吐きながらそう言う。

「セラフィだけでも逃げ」

ルミリアは目を閉じる。

「おい!ルミリア!起きろよ!まだ色々やってない事もあるし伝えてないことだって!」

その瞬間

頭の中で何かが壊れた気がした

「殺す!殺す!殺す!絶対に殺してやる!」

「そんなに邪竜を殺したいか?」

頭の中から聞き慣れた無機質な声ではない

男の声が聞こえた。

「邪竜を殺せるだけの力が欲しいか?」

男は言う

「あぁ欲しいよあの邪竜を殺せるだけの力があれば死んでも構わない!」

「では君の力を戻そう」

男が言った瞬間聞き慣れた無機質な声が

頭の中に鳴り響く

【承認されました。これより封印の解除を

行います】

体に光が集まってくる。

【封印の解除に成功しました】

力が漲ってくる気がした。

【邪竜を倒すには超絶魔法の使用をオススメします】

その言葉と同時に俺は邪竜の元に走り出す。

邪竜の目の前に立つが恐怖はない

俺はまるで知っていたかのように詠唱を唱える。


「世界の理を知る神々よ

何よりも美しく 誰よりも傲慢で

何者にも屈せず 絶対的な力を持つもの達よ

汝の敵を撃つため

力を解放し 天災となって顕現せよ!」

俺は大きく息を吸い込む

「超絶魔法!アトミックレイン‼︎」

すると急な脱力感と共に邪竜の頭上に数百の光の玉が出現と同時に光速で降り注ぐ

光の中の通過した所からは血も出ない

ただ穴があくだけ邪竜は必死に抵抗したが

やがて力尽き「ボンッ」という音と共に大きな魔石となった。

「勝った…のか…」

俺は地面に倒れこむ。


すると近くで喋り声が聞こえた

「マジかよ!邪竜がやられるって!」

1人の男はいう。

「まぁいい…取りあえずこのガキを始末するぞ」

もう一人の男も喋り出す。

「えぇ、もちろんよ」

最後の女の言葉の後にこちらに歩いてくる。

死んだな俺

体がピクリとも動かない…あぁ短い

人生だったな…と諦めていると

「あとは俺に任せろ」

と頭の中で男の声が聞こえた

俺はそこで意識を失った。

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