命の尊さ
「どうしたの!?その血?!」
俺がテーブルに帰ってくると2人前の氷の入った水を入れて戻ってきたマナがさっきよりも汚れた俺の服装に気づいてびっくりしたように言った。
「3人ほど殺った」
「冗談でしょ?」
「真実だ」
狩人といえどサラッと3人殺しました発言を無視する女の子がいたらそれはそれで怖いが。
マナは真剣な眼差しで俺を見つめた。明らかに苛立っている。
「人の命を何だと思ってるの。狩人ハンターなんでしょ?プラチナ級なんでしょ!?人を守るのが仕事なんじゃないの!」
「奴らは死ぬべき存在だった。1人逃したことを後悔し始めたくらいにな」
マナは予想通りの反応だ。普通の人間らしい。俺の心にはもう、ない。
「だからって!」
「君は甘い。もしアレを取り逃がして俺たちや君の仲間や家族が殺されたらどう思う?俺はそんな光景を死ぬほど目に焼き付けてきた。もしも過去に戻れたなら一番最初に奴を狩れるのに。とな」
俺の信念、節操は変わることは二度とないだろう。
俺のせいでこれ以上罪のない人々が死ぬのは嫌だ。二度と‥‥だからその可能性をうちに秘めている者やその要因はすべて潰す。
「‥‥」
「狩人ハンターだからじゃない。わかってくれ」
マナは悔しそうな辛そうな悲しそうな表情で黙り込んだ。そんな顔をしないでほしい。
だが俺がしたいのはそんな話ではない。
「何か頼めよ」
「‥‥‥うん」
いろんな動物やモンスターの素材が施された料理がずらりと並ぶメニューを開いて選び始める。
数分後、店員を呼んでマナから注文を受ける。
「じゃあ赤ドラウナーのステーキとココノハとサルバのサラダ、フィルの塩焼きにカマカマサザミのピザをください」
す、少しは遠慮しろよ‥‥‥俺の予想の遥かに上回りやがったな‥‥大食いなのかこの女。
まぁ金はあるから問題ないか。
「トロルワインと厚切りジェイソンステーキと薬草炒めを」
かしこまりました。と一礼した後店員は去って行って他に客がいないせいか静寂に包まれた。
「歳はいくつだ?」
「もうすぐ20歳」
20歳か。懐かしいな‥‥
「俺もそれくらいの歳だったときはまだ大学生で幸せな生活を過ごしていたよ」
「今は幸せじゃないの?」
マナから鋭い質問が飛んできた。彼女の幸せな生活も今日限りかもしれない。
「ああ、今日はそのことで話があるんだ。あんまり楽しい話じゃない」
「まぁ幸せな生活が無くなるって話はそりゃあ楽しい話ではないでしょうね」
バッドエンドが確定している話なんて‥‥思い出したくもない。
でも彼女にも関係があるから俺はしなければならない。
「話次第では鬼退治の報酬はタダにしてやってもいい。決めるのはお前だけどな」
「まだ何も聞いていないからなんとも」
「そりゃそうだ」
俺は深くため息をついて窓の外の暗い闇の中で微かに目に映った雨粒を見つめて口を開いた。
「3年前の話だ。知ってると思うがヤルマール帝国の某大学で大量虐殺が発生した事件についてだ」
彼女は大きく目を見開いてその後少し視線を右下に落とし、目を逸らした。
俺の想像通りの反応だった。
「知ってます。サンダル大学の学徒が殆ど殺された事件ですよね」
声のトーンを落として悲しそうに呟いた。
「そうだ。メディアの情報では事件は解決したとか、事件ではなく事故だとか好き勝手言っているがあれはすべて嘘だ。あれは紛れもなく未解決事件だ」
「どうしてそんなことがわかるんですか?」
ここから先を人に言うのは初めてだが本当に言うべきか一瞬迷ったが、話さなければ交渉が成立しない。
「俺がサンダル大学の生存者だからだ」
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