エピローグ 残雪
「さて、もうじき夜明けかな」
灯火の言葉に、空を見上げる。曇った東の空が、白く染まり始めていた。
「さすがにちょっと、冷えるね」
「そうだな、小屋に入るとするか」
初冬の早朝は、身に染みる。風邪をひかないとも限らない。
「なんだい、今日はやけにあっさり引き下がるね」
人形は不思議そうに尋ねてくる。
「知ってるだろう。おれは、語り手の想いを喰うんだ」
今夜は少しばかり、冷たい感情を喰い過ぎた。
「これ以上は、腹を壊しかねん」
少年は恥ずかしげに頬を掻く。
「未だに、消化しきれてないのかな。数百年経った今ですら」
結局、誰が正しかったのか。
「答えが出る問題でもあるまい」
「それでも僕はきっと、死ぬまで悩むだろうね」
「難儀なやつだ」
灯火は軽やかに立ち上がる。
「まったく、人の心ってのは難儀なもんさ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます