地獄からの使者キュウリメロン

 欧米から恐るべき災厄がやってきた。

 その名はキュウリメロン。

 大きさは大人の親指ほど、味はキュウリとライムを足した感じだ。

 その事からスイカの英語名ウォーターメロンと同じで政府はキュウリメロンをメロンとは認めず、メロンハンターはキュウリメロン退治を請け負う事が出来なかった。

 その結果、市民の間に多くの犠牲者が出てしまうのは想像だに難くない出来事であった。


 市民達からのバッシングを受け、支持率の大きく下がった政府はこれを重く見てメロン法に特例としてキュウリメロンをメロンと認める法律を作った。

 この件は野党から支持率を得る為に法を捻じ曲げたと非難され、その発言をした野党議員本人も法律を守る為なら市民が死んでもいいのかと市民からバッシングを受け、盛大なブーメランとなった。


 だが時既にお寿司、繁殖したキュウリメロンは日本中に広がり、小型のそのボディは都市の様々な場所に隠れ住んで人々を恐怖に陥れた。

 コレを商機と見た害虫駆除会社はメロンホイホイを販売し爆発的なヒットを飛ばした。

 キュウリメロン事件の始まりである。


 ◆


 キュウリメロン自体はそれほど強くない。

 その気になれば子供でも退治できる。

 ただ数が多いのが問題だった。

 たとえ弱くともその数で攻められらら歴戦のメロンハンターといえども命が危ない。

 その為大人は子供達に草むらやスキマのある場所に近寄らないように言い含め、キュウリメロンが食い破れない厚さのメロン靴やメロン手袋を身につけさせた。

 当初、機能重視でデザインの問題から敬遠されていたメロングッズだったが、ファッションデザイナーの参加や、子供向けヒーローのデザインを模したグッズを出す事で瞬く間にブレイク。

 キュウリメロンブームを巻き起こした。

 予想外のヒットを羨んだある国々は輸入を禁止されているキュウリメロンを密輸し大陸に解き放った。

 瞬く間に広がったキュウリメロン被害に対し、彼等はパチモングッズを販売して大もうけ。

 販売したグッズは質の悪い粗悪品であった為、被害者が続出し政府に対して国民がデモを行うまでに発展した。責任を取る事を恐れた政府はパチモンを売りつけたメーカーをキュウリメロン密輸犯として指名手配し責任の追及を逃れた。

 瓢箪から駒である。

 その後、ある国々は質の悪いメロングッズを作り続けは被害を拡大し内政は悪化の一途を辿り、遂に政府はグッズ販売その物を禁止した。

 しかし世界中の国々はただの自業自得なので無視する事にした。


 ◆


 メロンが襲ってきても被害が少ない日もある。

 そんな事件である。

 なお、日本のキュウリメロンはメロンによって餌と認識され絶滅していた。

 所詮別種の植物という訳か。

 ウチは大丈夫なのかって?


「メローン」


 ボリボリ。


 ウチはホラ、番犬ならぬ番生ハムメロンがいるから。

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