メロンの皮の覚醒
人類とメロンの争いは続いていた。
より強力に、より狡猾にメロン達は進化して言った。
既にメロン達を生み出したSYKも、そして彼等に進化させられたほかの野菜達もメロンによって滅ぼされ、戦いの舞台は二つの種族の存亡をかけた生存競争へと発展していった。
だがそこへ予想だにしない第三勢力が現れた。
「我々メロンの皮はメロンと人間に対して宣戦布告を行なうものである」
まさかのメロンの皮参戦である。
◆
恐ろしい事に彼等はメロンの死体から生まれる。
人類がどれだけメロンを抹殺しようとも、即座にメロンの皮という新しい敵が生まれるのだ。
幸いだったのは彼等にとって、親とも言えるメロンすらも殲滅対象だったという事だ。
彼等にとっては自分達を不用品として捨てるカットメロンや100%メロンジュースは、育児放棄した親も同然。敵対する事に何の躊躇も無かった。
新たな敵の登場に当初は三つ巴の戦いをしていた俺達だったが、戦況が悪くなるにつれ予想外の選択を選ぶ事となった。
つまり、人類とメロンの同盟である。
人類はメロンを食べない事を、そしてメロンもまた人類を食べない事を条件に共闘をする事となった。
戦場に舞うメロンと電子レンジ、ミキサー、冷蔵庫、戦争に使えるありとあらゆる兵器が借り出された。
そして人類は禁断の兵器、カブト虫を導入した。
メロンを餌にして育ち、メロンだけを食べる感情なき殺メロンマシーン。
更にはその発展系であるクワガタまでも導入された。
その恐るべき兵器の前に、身がむき出しのメロンの皮達はなす術も無かった。
ついでにカットメロンと100%メロンジュースも被害にあった。
この非メロン的兵器にメロン達は強く講義をするが、メロンを食べたのはカブト虫とクワガタだから条約違反ではないと突っぱねた。
この時点で両者の間に深い溝が刻まれたのは言うまでも無い。
◆
結果として人類とメロンは勝利した。
だが、その先に待っていたのは再び巻き起こる人間とメロンの戦争だった。
人間は最終兵器カブト虫とクワガタを、メロン達は反最終兵器殺虫剤を手に最終決戦に赴いたのだった。
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「かつてこの世界には人間とメロンという生き物が互いの繁栄をかけて争っていた。しかしこの二つの種族は長い戦争によって衰退し滅んだ。これらの戦争の歴史は当時の人間が残した遺跡に記されており、彼等が高度な文明を持っていた事が用意に予測できる」
御伽噺のような話。だがそれは紛れも無い事実であった事を世界各地の遺跡が教えてくれる。
余りにもメジャーすぎて様々な娯楽メディアで題材にされるくらいだ。
「我々は彼等の歴史を紐解き、先史種族の辿った結末を再現しない様世界に発信しなければいけない。それこそが先史文明学の学び手たる我々の使命なのだ」
教授がいつもの様に熱く語る。
だいたい主に5回は同じ事を言っている。
「我々スイカは、この世界における最新の菜長類として賢く有らねばならんのだ!」
これもお約束の台詞だ。ここからバイオ研究批判が始まるのがいつもの様式美である。
「おい講義終わったらどうする?」
悪友が講義の最中で有るにも関わらず遊びに誘ってくる。全く仕方が無い奴だ。
「あ、俺新しく出来たゲーセン行きたい」
まぁ遊びたいのは俺も同じだが。
「んじゃ講義終わったら駅前のモックで集合な」
「おっけー」
「で、あるからして……」
今日も俺達スイカは平和な日常を満喫していた。
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