冷凍メロンとの死闘

 警察官が拳銃を構えて射撃する。

 弾丸は狙いを外さず標的に命中した。

 しかしそいつは鉛の玉を喰らっても平然と動いていた。

 当然だ。何故ならそいつはメロンだからだ。

 銃弾の一発や二発で死ぬ筈が無い。

 警察官が逃げ出す。

 メロンが追う。

 あわや警察官がメロンに食われるかというその時、ハンターが到着した。

 彼等は警察官を喰らおうと口をあけたメロンを電子レンジで殴り飛ばす。

 殴られたメロンが空中で姿勢を直しながら地面に着地する。

 ハンターが電子レンジの蓋を開ける。

 レンジでチンするつもりだ。

 何故かメロンの動きは遅かった。

 この程度の速度なら普段からメロンの相手をしているハンターにとっては止まっているような物だ。蓋の開いた電子レンジを虫取り網の要領で振るいメロンを包み込む。

 レンジが固定された棒に付けられたボタンを押すとスライド式の蓋が閉じられメロンが閉じ込められる。

 ハンターは無慈悲にチンした。


 チンする事1分。

 ハンター達は楽な仕事だったと笑いながらレンジの蓋を開ける。

 ホカホカのメロンを見る為だ。

 それが彼等の最後の姿となった。


 ◆


「ハンターが全滅?」


 メロンハンター協会に呼び出された俺はある地方のハンター達がメロンに全滅させられたと報告を受ける。


「新型のメロンか?」


「いや、メロンは従来型だ。あえて言えば突然変異種と言った所か」


 俺は困惑した。従来型なのに突然変異? 一体どういう事だ?


「詳しくはコレを見てくれ。ハンターの車に搭載されていたドライブレコーダーの映像だ」


 机の上に置かれたノートパソコンが開かれ、動画が再生される。

 そこに映された驚愕の映像に俺は驚きを隠せなかった。


「ああーん!」


 エロビデオだった。


「おっと、間違えた。こっちだ」


 そのまま見せろ。


「そのまま見せろ」


 だが俺の意見は却下されメロンとの戦闘動画が始まる。

 ハンター達がセオリー通りにメロンを電子レンジに入れチンしている。


「普通の光景じゃないのか?」


「問題はこの後だ」


 チンの終わったハンター達がレンジの蓋を開け中を覗き込む。

 その瞬間ハンターの頭がメロンになった。

 いや違う、電子レンジから飛び出したメロンにハンターの頭が食われたのだ。

 頭を食われたハンターの体が崩れ落ちる。


「どういう事だ? 電子レンジが壊れていたのか?」


「いや、違う。遺品を調べた結果電子レンジは正常に機能していた事が判明した」


「だとすれば一体なんで電子レンジが通用しなかったんだ?」


「コレは我々の推測だが」


「かまわない、聞かせてくれ」


 協会員が重々しく語りだす。


「事件が起きたのは北海道の夕張市だ」


「みたいだな」


「そして季節は冬」


「ああ、冬だな」


「そう、冬だ。水は凍り、熊は冬眠する冬だ!」


 その言葉によって俺の脳裏に衝撃的な言葉が浮かび上がる」


「おい、まさか……」


 俺の言葉を肯定するように協会員がうなずいた。


「奴等は冷凍メロンだったんだよ!!!」


 俺は頭をハンマーで殴られた気分になった。

 冷凍食品、それは電子レンジの天敵。

 解凍したと思わせて中身は今だ冷たいままのカチンコチンの冷凍食品。

 電子レンジが効かない筈だぜ。


「正直どうすればいいか、我々も対応に困っている。吹雪荒れ狂う試練の大地では火炎放射器も効きが悪い」


「いや、大丈夫だ」


「何か良い手段があるのか!」


 協会員が飛び上がらんばかりの勢いで椅子から立ち上がる。


「ああ、任せろ」


 俺はそっと電子レンジを解凍モードにした。

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