第608話 第1章 5-3 波状攻撃開始さる
パオン=ミが、ふと鏡めいて静かに佇む湖面を見た。マレッティがやけに気にしていた。
ざわり 、と風もないのに山側の木が揺れた。
タカンやドゥイカが気にして岸から山側を見上げた。マレッティとマラカは、逆にパオン=ミと同じく湖面を見入る。
湖が、ぐうっと盛り上がった。
「走って!!」
マレッティが叫んだ。もう、盛り上がった湖面からゴボゴボと気泡がたち、それが爆発して、巨大な竜の頭が見える。しかも、あれは、
「あ、あいつだわ!」
トロンバー攻防戦のとき、ユーバ湖から出現した、全身が白銀の鱗におおわれた三頭の巨大竜だ。
「あれは、
パオン=ミも動揺して、タカンを護りつつ走り出した。
「やっぱり、こっちの竜なのねえ!?」
そのとき、銀色の短矢が空中から出現し、めざとく見つけたマレッティがなんとか光輪で迎撃した。
「上から来たわよ!」
やられた! パオン=ミが、単純な判断ミスに歯ぎしりする。何のことはない、先般は
「我はそんなことにも思い至らなかったか!!」
新たに呪符をごっそりと出し、先日より考えていた策を発動する。つまり、その呪符は花火めいて全て空中へ向かって飛び、赤い煙を出して次々に炸裂した。その煙は霧めいて滞留し、毛長飛竜の飛ぶ軌跡が、手にとるように分かった。
「……こぉの!!」
マレッティの光輪!
赤い煙を切り裂いて三つの光輪が飛び、急ターンで逃げる透明な竜を迎撃する。ひとつ、ふたつとかわしたが、三つ目が見事に直撃した。
バアッ、と血潮が空中に飛び散り、切り裂かれた竜と人間が透明なまま、まっさかさまに湖へ落ちた。一人倒した!
だが、三頭銀亀竜が岸へ泳ぎ着いていた。一行の行く手へのっそりと上陸する。狭い湖畔では、どっしりとした亀のような平べったい竜の身体だけで完全にふさがれてしまった。
そこへ、真後ろより低空を急接近してきた一頭より、ロープが伸びる。ロープ遣いだ! それが生き物のように伸び、一直線にタカンを襲った。
一同が眼前の三頭銀亀竜や上空の竜の飛び軌跡へ心を奪われている隙に、後ろよりタカンを襲おうとした作戦だったが、それへ気づいたマラカがタカンをかばって割って入り、ロープへ囚われた。
そのまま、引っ張られて空中へ吊り下げられる。
「マラカ!?」
しかしマラカ、ガリア「
マレッティは三頭銀亀竜めがけ、前に出た。アーリーであれば、火炎弾の一撃で消し炭にしたが、あれは超主戦竜をもひるませる攻撃だ。いまの自分にどれだけのことができるか……マレッティは自分に賭けた。感覚としては、この竜は超主戦竜級と主戦竜級の間ほどの存在と観た。それならば、やりようはある。
パオン=ミはそれを援護しようとさらに空中めがけて呪符を放つ。連続して赤い煙が噴出し、空が真っ赤に染まる。空中を行く一頭が大きく旋回している跡が見えた。きっと、あれが短矢遣い……バーララだろう。
と、一か所に停まって羽ばたいている一頭を発見した。
(もしや……)
パオン=ミ、その羽ばたく透明な存在へ呪符を飛ばす。大きくカーブを描いてそれは火の鳥となって飛び、気づいたその者があわてて上昇したが間に合わず、死角から直撃した。突き刺さって火炎が吹き上がり、グボォア、ボウア! 身体の内部より爆発して、吹き飛ばされ、粉々の火達磨となって毛長飛竜と何者かの燃えかすがバラバラと湖へ落ちた。
すると、残ったバーララとロープ遣いが姿を現す。やはり! 今のが姿隠しのガリア遣いだった。
「居場所が分かれば、何程もない!」
パオン=ミの本領発揮。気持ち悪いほどに両手から大量の呪符がほとばしり出て、何十という火の小鳥が現れる。その迫力にロープ遣いは戦意を喪失して一目散に退散した。バーララが飛竜を駆り、奪えないのならばせめて直援の無いタカンを殺してしまおうと湖面ぎりぎりから低空侵入し、ガリア「
「なんの!」
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