第489話 3章 序 捲土重来

第三章


 「策のたて直しぞ」

 翌日の昼食後、食堂で、さっそく作戦会議だ。

 「最初に、猛省する。カンナの云う通りであった。我等二人、この奇襲を甘く観ておった」


 パオン=ミとスティッキィが、カンナへむけてこうべを垂れる。カンナは何とも云えずに、見返すのみだ。


 「次に、奇襲が相手方へ漏れていたのは確実。どこから漏れたか検証する」

 パオン=ミが重々しく云い放ち、二人も緊張する。

 「まず考えられるのは、このなかに裏切り者がいる」

 何を云うのかと思ったら、カンナが驚いてパオン=ミを見つめた。


 「いるとしたら、パオン=ミ、あんたよ。ユホ村をガリアで探索したときに、教えた」

 カンナはさらに驚いてスティッキィを見た。

 「で、あろうのう」

 またパオン=ミを見る。

 「だが、我ではない」



 「で、しょおねえ。アーリーを裏切ってガラネルつく意味がないし、それほどがあるとも思えない。弱みは……どうだかしらないけど」


 「たとえ親子恩人が人質になろうとも、我は二君へ仕えぬ」

 「じゃ、次の可能性はあ?」

 「我らの襲撃を知っていた人物が二人。まずあの猫のガリア遣いの少年」

 「あたし、あいつが怪しいと思う。あの猫、けっこうどこでも行けるわよ……」

 「都市政府が、ガラネルとつながっていると?」

 「いやあ、あいつがもともとガラネルの手下なんじゃない?」


 パオン=ミが腕を組み、考え出す。カンナは、既に二人が何を云っているのかよく分からない。あの少年がガラネルの手下かもしれない? どうして?


 「その可能性は高いであろう。それに、都市政府の中には、他にも教団の信者がおるやもしれんしな。しかし、ウガマールより来た、なんといったか、あやつはどうだ?」


 「あいつは……わかんないわあ。カンナちゃん、あいつはどうなの?」

 「えっ!?」


 急に振られたが、キリペはカンナとて初めて会う人物だ。しかし、クーレ神官長の手紙はどう見ても本物だったので、まさかガラネルの間者というのは流石に無理があると思った。


 「ウガマール奥院宮おくいんのみやの確かな身分じゃないと、神官長様には会えもしないから……」


 と、いうのが精一杯だった。

 「……保留か」

 パオン=ミの一言で、本格的な次の手を考える段へ移る。


 「さて、奇襲に失敗した相手をどう攻めるか。もたもたしていると相手は姿をくらませるか、より防御を硬くするか、逆襲してくるか。とにかく急がねば」


 「まさか、バグルスがあんなにいるとはねえ。神殿みたいなのを数日で解体してしまったというのも、バグルスかしら?」


 「さてな」

 「なんのために?」

 「わからん」

 「なによお、わからんばっかりじゃないのよお」

 「わからぬものはわからぬわ。そう云う其方そなた、なにか良い策は無いのか」

 「無くもないわよお。搦手からめてだけど」

 「なに……?」


 スティッキィは、ざっと自分の考えを説明した。パオン=ミが感心する。

 「よくもまあ、そのような手を考えつくのう。さすが商家の出というわけか」

 感心するというより、半ば呆れていた。

 「しかしまあ、現状、それしかなさそうだ。やってみようぞ。カンナも、それで良いか?」


 「ええ……?」

 話が大きすぎて、よく分からなかった。少し、違和感もある。

 「なにか、不安か?」

 「う、うん……」

 「遠慮なく申せ」


 「じゃ、云うけど……それがうまくいったら、ユホ族はどうなるの?」

 パオン=ミとスティッキィが眼を合わせる。スティッキィが肩をすくめた。

 「んじゃなあい?」


 やはりそうか。カンナはぐうっと息を飲んだ。だが、もう、ガラネルと正面からやるしかない。早く終わらせて、ウガマールへ行かねば……。


 三人はその日遅くまで、打ち合わせをした。



 1


 念のため、レストのガリアである雉虎の猫に行動を探られぬよう、最新の注意を払って、翌日よりさっそく三人は行動した。幸い、パオン=ミのガリアは複数を同時に動かせる。ユホ村のその後を小鳥の形に折った符で探りつつ、密かに都市政府へもトカゲの形に折った符で色々と探る。


 また、スティッキィもガリア同士の連絡の力で、マレッティと談合を途切れ途切れにも起こっているようだった。そちらのほうが、スターラだとパオン=ミの呪符が飛ぶより速いからだ。


 「やっぱり、パウゲンを超えるとなかなか声も聴こえにくいみたい」

 などと云っていたが、なんとかレブラッシュに話がつながったようだ。

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