第273話 激戦、空間断裂!

 しかし、それがいまやカンナのガリアの特別な『力』を封じるものとして、絶大な効果を発揮している!


 ガリアを戦略的に遣う、あるいは遣い方を指示できるものがいるといないとでは、まったくガリア遣いの個としての強さだけではなく、ガリア遣い軍団、ガリア遣い部隊としての強さに差がでてくる。


 「…………!」


 大戦斧だいせんぷが軽々と振りかざされ、ギラリと光る刃の部分が、陽炎めいてゆがむ。空間断裂!


 カンナ、走って回りこむ。一か所にとどまっていてはだめだ!

 「……!!」


 戦斧をカンナへ叩き付けるダンティーナだが、空間を引き裂く波は一歩遅れて飛んでゆくので、あまり素早い動きに対処できない。カンナは思わず発見した敵のガリアの弱点に見向きもせず、一直線にルバータへ向かった。


 「……!!」

 ダンティーナも急いでカンナを追う。


 ルバータは、カンナが自分を狙っていることにすら気づかない。カンナが走っているのは、ダンティーナの攻撃から逃げるためだと思っている。


 「……!!」

 ダンティーナが叫ぶが、何も聴こえない。これは、逆効果だった!


 カンナが必死の形相で黒剣を両手下段にひっさげたまま自分へ向かってくるのと、それはなんのためなのかを、ようやくルバータは理解した。あわてて逃げようとしたが、足がもつれて腰から崩れた。


 そこで、一気にその剣先でルバータを刺し貫けるかというと、カンナには無理だった。


 一応カンナも非情に徹し、気合を入れて剣を振りかざし横なぎにルバータを叩き斬ったつもりだったが、ただの剣技は素人以下であるし、盗賊でもなければ、ガリア遣いとしても一般人にほぼ等しい相手を殺すほどの覚悟も無いため、まるで間合いが合っていなかった。


 だが、ルバータが防御のために無意識に手を挙げ、ガリアである大きなヤスリを持っていたので、それが黒剣へ当たり、ルバータの手から飛んで行ってしまった。


 ガリアのヤスリが石畳の上を回りながら離れてしまう。

 効果範囲から外れ、音が甦った。

 ドガア!! ビシュア!! ガラガラガラ……!


 封印されていた雷紋黒曜共鳴剣らいもんこくようきょうめいけんが一気に共鳴して、カンナから稲妻が溢れ出た。バリン、と衝撃波で近くの建物の窓が割れ、どこかの工場の炉でも爆発したのかと思った住民もいたほどだ。窓から顔を出して、ガリア遣い同士が戦っているのを見て、すぐに顔をひっこめる。ルバータは衝撃で失神しかけた。


 「やらせるかよ!」


 ダンティーナが踵を軸に一回転しながら勢いをつけ、巨大斧をカンナへ叩きつける。空間が裂ける!


 「ぬいぃやああ!」


 気合と共にバ、バッ、と空気に電光がほとばしって、斧と断裂を飛び越して直接ダンティーナ本人を稲妻が襲う。


 「ギャウ!!」


 猛烈なショックと電熱にダンティーナが身をすくめた。攻撃が中断し、ただの一撃でがっくりと膝をついて、ガリアが消えかける。全身が裂けて、心臓が破裂しそうだった。髪が焦げて、煙が出る。

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