第246話 カルマ暗殺ゲーム

 「メ、メスト筆頭のガリア遣いが……カルマごときに……!!」


 仮面の右手がぶるぶると震えた。彼にとっては、稼ぎ頭であったシロンを失ったのが痛い。


 「に、二年近くもシロンをあのような最果ての島に派遣させておいて……前金ではまったく足りない……大損だ……大損だぞ……!」


 で、あった。


 「ガラネルのバグルス……ギロアといいましたか……そやつも殺されたのでは、ガラネルも穏やかではないでしょう」


 置物のようだった甲冑が初めて、ガシャリと音を立ててバーケンの方を向いた。

 「そう……だと思います。ブーランジュウが、仇討ちをと息巻いておりますから」

 「ブーランジュウ?」

 「もう一匹の、ガラネルの使うバグルスですよ」

 「ああ……」

 甲冑が、知っているような、知らないような生返事をした。


 「バッ、バグルス風情に云われんでも、我々が、責任もってカルマなんぞ叩きつぶしてくれるわ! な、なめおって! そのための招集なのだなっ!?」


 「左様」

 バーケンが、ゆったりとうなずく。

 「……で、どのような方法でるのだっ!?」

 仮面が息を荒らげる。いまにも自分でつっかかって行きそうな勢いだ。

 「お待ちください。これは、そもそも誰の依頼になるのでしょうか?」

 甲冑が右手を上げて仮面を制した。それはもっともで、仮面も黙る。


 バーケンもややしばらく黙っていたが、仮面がまたぶるぶると震えだしたので、その覆面で見えない口を開いた。


 「これは、我々メストが自主的に行うべき案件であると考えますぞ。誰からの依頼でも無く……でなくば、メストの面子が保てません。このスターラの裏世界で、筆頭を潰されて黙っていては、末端にしめしがつかない。ここは我等三人がそれぞれ依頼主となり、金を惜しまず、次代のメスト筆頭の座と多額の賞金をかけて、手駒の暗殺者どもを繰り出し、カルマを何がなんでも葬り去らねばなりませんぞ」


 「ほう……」

 仮面が、素直に感心して何度もうなずく。

 「面白い。賞金首として裏社会の連中に狙わせる……なかなか面白いだ」

 「私も、依存はありません」

 甲冑も賛同したので、バーケンもうなずいた。


 「では、相手はサラティスのカルマ四人。筆頭がアーリー、次がマレッティ……カンナというのは、一番の新人ですが、盗賊共を壊滅させたのはこのカンナというやつです。それをお忘れ無く……あとは、既にスターラ入りしており、チョロチョロしていたモールニヤというやつ。しかしこやつ、どうも偽名で動いていたようで、まだ面が割れていない。早急に、正体を探っておきます」


 「目標を探すのも仕事の内だ。それぞれの手下を使って、探したもの勝ちだろうが」

 「ごもっとも」

 バーケンと甲冑が、同時にうなずく。


 「では、そういうことだな。賞金の額はどうしようか。てはじめに……ダールであるアーリーが二千トリアン。マレッティが八百、カンナが五百。モールニヤが探索費も含めて六百でどうだ?」


 「よろしいでしょう」

 甲冑もうなずき、当面の賞金額も決定した。討ち漏らせば、その後も値はあがり続ける。

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