第145話 裏切り
「ほおう……」
ニヤリと口を開け、
カンナは目の前の敵に集中した。こいつが、ガリア遣いの殺し屋か!
だが、どうしても共鳴が弱い。なぜか。相手は竜ではない。殺し屋といえども人間だ。殺意が起こらない。
心が、決意が、甘いのだった。
それを見透かしたように、眼帯の女が葉巻をぶかぶかと吸いこみ、それを枯れかけた草むらへ叩き捨てるとブーツで執拗に踏みつけて消した。
「野火になっちまうだろう?」
片目をカンナへ向け、何のためらいも無く澱みない動きで銃口をつきつける。カンナは何の武器なのか理解できず、戸惑って剣先を向けるのが精一杯だ。
バガーン!!
同時に銃声と雷鳴が鳴り響く。
ガリアの弾丸が稲妻と音圧に弾かれ、どこかへ飛んで行った。すかさずカンナが走りこんで間合いを詰める。飛び道具らしいとは認識できた。剣の間合いに入らなくては!
「チィ!」
眼帯が逃げて間合いをはずす。すかさすカンナをねらったが、
「……いいいぇやああああ!」
カンナのスイッチが入った。相手が竜だろうと人だろうとかまうものか。相手がガリアを遣うのなら、こっちだって遣うまでだ!
ドドドド、と海鳴りめいて重低音。黒剣が久しぶりに鳴った。
「えええい!」
振りかぶって、音の塊を叩きつけた。いや、それは超音波か。土壇場で新しい力に目覚めたのか。眼帯が銃を撃つ前にそれを食らって耳を押さえた。足がもつれる。
「……やりやがる!」
そこへ雷撃! 地面を稲妻がはしり、眼帯め、とっさに跳び上がってそれをかわした。が、放電がその空中の肉体を襲った。バっシ! と痺れ、眼帯が草むらへ転がった。威力は弱まったが、麻痺にはなったようだ。
「や、やった!」
思わずカンナがトケトケへ振り返った。無事を確認する余裕ができたのだ。
カンナの視界に入ったのは、ガリアの鋼鉄弓をケガをしていないほうの片手で振りかぶったトケトケだった。
カンナは脳天を殴りつけられ、メガネもぶっとんで倒れた。
「う、う、……」
血が顔へ滴った。メガネをなんとかとり、トケトケを見上げた。無表情で、トケトケがカンナの腹を蹴りつけ、カンナは気絶した。
一方、丘の上から急斜面を下りてきた三人と対峙したアーリーとマレッティ、ガリアを出して注意深く観察した。アーリーが、ニエッタとパジャーラへ逃げろ、と手で合図した。云われるまでもなく、二人は竜退治も放り捨てて砂浜を駆けて行った。
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