第133話 暗殺依頼

 「お三方は、サラティスのガリア遣いで」

 「そうだ」

 「では、バスクというやつで?」

 「知っているのか?」

 「知ってますとも。で……どのバスクで?」

 どの、とは、つまり、

 「我々は、サラティスのカルマだ」

 「カルマ!!」

 おやじがひきつった。

 マレッティとカンナが顔を見合わせる。

 「カルマというのは、サラティスのバスクの中で最もと聴いておりますが」

 「強いというよりい、可能性が高いのよお。知ってる? カルマの可能性鑑定」

 「お、お噂は……」

 「どっからそんな噂が出るのよ、こんな辺鄙な島で」

 「ちょっと、マレッティ……」


 酔っぱらったのだろうか。カンナが袖を引く。エールは飲みやすいが、意外と度数が高い。


 「い、いえ、ウガマールとサラティスから、ガリア遣いを呼んで、竜を退治してもらっているので」


 だからなんなのだろう。自分たちは、明日にでもストゥーリアへ向けて出発しなくてはならない。


 「そいつはよかったな。バスクはモクスルか?」

 「そうでさ」

 おやじは何か云いたそうに、汗をかいて三人の座る席の横から離れない。

 「どうしたんですか? 顔色が悪いですよ」


 食後のハーブティーを飲んで、カンナが尋ねる。おやじはカンナもカルマと聞いて、思わず身を震わせた。


 「あの、その……お三方、よければ、いま、島にいるガリア遣いたちを手伝ってやってくれませんか。十人いたガリア遣いも、いま三人なんでさ。い、いや、待ってください! 雑魚竜なんざ、お三方の手を煩わせるものではないことは重々承知で……つまり、その……こんなことを頼んでいいのかどうか分かりませんが……」


 おやじがゴクリと音を立ててつばをのむ。

 「はっきり云え」

 アーリーに促され、おやじは意を決した。

 「つっ、つまり、コンガルの連中の雇ったガリア遣いを殺してほしいのでさ!」

 三人の眼の色が変わった。

 


 「ガリア遣いを殺せだと!?」


 確かに、ガリアは竜を殺すが人も殺す。それもたやすく。しかし、ガリアは竜の鱗を難なく裂くが、鉄の鎧は並の武器としての威力しかない。人を殺すのは、三人で云うと炎、稲妻に音圧、それに光輪斬と、個々人の持つガリアの特殊な『力』のほうだ。


 「おい! ガリア遣いは竜との戦いのために天よりガリアを授かった、云わば選ばれた存在だぞ! それをガリア遣い同士で殺しあえなどと、竜どもの思うつぼではないか! さてはこの島、竜属の手に落ちているのか!?」

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