第99話 雷と炎の奔流
カンナはしかし、避けることもなく、黒剣を天高く掲げ、なんと自らへ雷を雨あられとほとばしらせた! それが渦巻き、編み目となって、巨大な球体となってカンナをつつむ。
その猛烈な雷球の塊へ、デリナがつっこんだ!
「ウアアアアア!」
凄まじい電流の嵐に打ち据えられつつも、デリナが雷をかき分け、カンナへ近づく。
「う……ぬ……」
生物がおよそ耐えられないであろう電圧をデリナは耐え、エネルギーの中を泳いだ。じわじわと中心のカンナへ接近する。
「おお……の……れ……!」
デリナがついに、カンナの肩へ手をかける。その光と熱の激甚奔流の中で、逆に毒炎を吹き上げ、顔をカンナへ近づけた。
「……おのれはあ、いったいい、何者だああア!!」
カンナも稲妻の最中で叫び返す。
「わたしは……わ、た、し、だあああああーッ!!」
ガガラアァッ……! 二人は雷と炎をぶつけあい、つかみ合って、おそるべき
「ぬうううう!!」
「ふん……ぎいいいい!」
「……うううおわらああああ!!」
「ま……けないいいいい!!」
二人は額をつけてにらみ合い、やおら互いに拳を振り上げると、剣も槍も無く、同時に殴りあった!
同時に、拳が互いの顔面へ食い込む。
「クゥ……!」
歯を食いしばって、もう一度、殴りあった。
そのまま、子供じみて殴りあい続ける!
「……おのれ……こやつ……おのれ……!!」
「こぉの……このっ、こおおのおおおお!!」
二人は炎と雷とを拳にまとわせ、幾度となくぶつけあった。その都度、雲の中で爆音と閃光と爆光が轟いた。遠い上空の雲の中で、それは、いつ果てるともなく続くかにみえた。ひたすら降り注ぐ雷鳴と波動が、神々の世界よりの啓示にすら思えた。
だが、二人とも神ではない。
人離れしているが、あくまで人の域にいる。
二人の殴り合いは次第に威力が弱くなり、間隔も空く。周囲の炎と稲妻が晴れ、雲間に地上が見えた。
カンナもデリナも荒々しく肩で呼吸をし、体力の限界までその力を振り絞っていた。
「……ええいッ!」
デリナがカンナを突き放した。
「ハアーッ、フウーッ……!」
デリナは毒の息をついて吐息を鳴らし、カンナをにらみつけた。つきとばされたカンナは風と雲の中で黒剣をだらりと下段に構えたまま、うつむき加減に顔を臥せ、黒鉄色の長い髪を吹きさらしにしていた。果たして、カンナの力はついに限界を迎えたかに見えた。
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