第95話 援軍

 が、黒剣が衝撃波を発し、その霧の縄を一撃で吹き飛ばした。

 「な、にっ……」

 これにはデリナも目を見張った。


 ズ、ドオッ、ゴゴゴ! 突如として地鳴り! いや、これは黒剣の振動! グワッ、と空気を裂いて周囲を圧し、バシバシと稲妻がほとばしった。


 ドッ、ガガアッ!! 身をすくめる衝撃音がして、大柄なバグルスが雷撃に打たれ、胸が焼け焦げてひっくり返った。そのまま煙をふいて動かない。


 「……この、ガキめが!」

 「ううっ、わあ、あああ!」


 カンナがデリナへ迫り、稲妻のほとばしる黒剣を叩きつけた。デリナが真っ黒くねっとりとからみつく霧の毒槍で迎え撃つ。一合、二合と刃を交えたが、その重さが段違いだった。しかも、デリナの手に痺れが残る。稲妻が、高圧の電気が、槍を伝ってデリナの腕まで届いている。デリナの毒は、届かない。


 「……己の対策も済んでおるわ! 我に同じ手は、通じぬ!」


 ドレスの足元より、裾を巻き上げて真っ黒い煙が吹き上がる。カンナは、歯を食いしばって息を止め、後退った。毒の煙だ。デリナはそれを操り、自身へまとわりつかせた。まるで毒蒸気の鎧だ!


 「なんのつもり!?」

 カンナが電流をぶちまけた。煙に吸収され、デリナがほくそ笑む。

 カンナは驚いた。稲妻が通じない!

 「お前なぞ!」


 ごっそりと足元を煙が流れ、移動する。風が吹き巻いて、毒の陣地を広げて行く。カンナは下がって避けながら、追い込まれた。少年バグルスがカンナの走る先に待ち受ける。


 「……こおおいつめえええ!」


 カンナがバグルスめがけ、黒剣を振りかざす。ビリビリと剣が振動した。だが、少年バグルスは身構えたまま、まったく動かない。


 「なにをやっている!?」


 デリナが叫んだ。カンナは気づいた。バグルスの首元に、太い針が一本、突き刺さっている。


 「ええいッ!」


 雷撃と斬撃と衝撃が、同時に炸裂した。バグルス、肩口から袈裟に真っ二つとなり、感電で焼け焦げ、さらに爆発微塵!


 衝撃波で、毒霧も下がる。

 デリナが眼をむいた。

 黒い霧の奥より現れたのは、

 「フレイラさん!」


 フレイラは両手の指間にガリア「竜幻麻針りゅうげんましん」を四本ずつ握り、手を交差して構えていた。


 「外で揉まれて、ちょっとはやるようになったじゃねえか」


 どうしてここにいるのか、アーリーの命令はどうなったのか、そんなことはどうでもいい。フレイラがいるだけで、カンナの心は果てし無く安心で満たされた。


 「己、いままでどこへ隠れていた! 己もちょろちょろと目障りに我が陣内をうろつきおって……!」

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