私を作った漫画たち(一)魚喃キリコ作「ストロベリー・ショートケイクス」

 私は子供の頃からリアルタイムで有名どころの漫画でも未読の作品が多く、決して漫画ファンとは言えません。


 それでも、「好きな漫画」と聞くといくつか浮かぶ作者や作品があります。


 例えば、学生時代は魚喃キリコさんの作品が好きで数冊買いました。


 映像化された「ストロベリー・ショートケイクス」もロードショーで観ました。ご存知の方も多いかもしれませんが、摂食障害に苦しむイラストレーターの塔子は作者の魚喃さんご本人が演じられています(演技者としてのクレジットでは『岩瀬塔子』)。


 「ストロベリー・ショートケイクス」の塔子や幼なじみのOLちひろを始めとして、魚喃さんの作品は地方から上京した若い女性の悩みや痛みをどこか露悪的に、しかし、決して断罪調にではなく描いたものが多いです。


 福島から上京した学生時代の私には作中の女性たちがどこか自分の分身や同級生の友達のように近しく感じられました(ちなみに魚喃さんも新潟出身で福島と比較的近いです)。


 「ストロベリー・ショートケイクス」の漫画版でも映画版でもホテトル嬢の秋代は正に心身を一へらずつ削られるような日常を送っています。


 職場でも恋愛でも挫折を強いられるOLのちひろにも根深い自己否定感が見えます。


 魚喃さんご本人の投影と思われる塔子も一見イラストレーターとして時代の最先端にいるようで実は中年男性の編集者からは侮蔑的な応対をされる等、常に傷を負っています。


 フリーターの里子には唯一明るさが見えますが、これは他の三人より年少の彼女がモラトリアム的な立場にいるからこその余裕にも思えます。


 作者さんにそうした意図があったかは不明ですが、「現代日本女性の生き難さ」というジェンダー問題に目を向ける契機になった点でも印象深い作品です。

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