007 少女と少年

 温かい陽の光は心地よく、時折吹く風が頬をくすぐり、ダークブルーの髪を揺らす。

 アルデネの木が幾つも連なる東の森を歩く一人の少女、アーティ・フェンネル。彼女はスキップでもしそうなくらい上機嫌だ。なんせ今夜の夕飯は村一番の親友であるミーシェルと食べることになっているからだ。その食材調達のために森を訪れた彼女の歩はとても軽い。

 しばらく歩いていると木の根元に生える白色のキノコを見つけた。

 ルブダケというキノコだ。

 それを手に採り、笑みを浮かべて今日のメニューが決定された。


「キノコのシチューにしよう」


 ルブダケはアルデネの木の根元にわりとよく生えるキノコで、煮ると美味しさが増すのでシチューにぴったりだ。


「後は何かあるかな」


 辺りをキョロキョロしていると川のせせらぎの音が耳に入ってきた。

 そういえばこの近くに小さな川が流れてたっけ、と喉がちょうど渇いていたアーティはその方向へと小道を外れ草むらの中を歩いていった。

 川のせせらぎの音は段々と大きくなり、そして草むらが消え視界が開ける。と、しかしアーティはそこにあるはずのないものを見て思わず目を丸くした。

 川のほとりに、うつぶせで倒れている一人の少年。

 その少年の体中は傷だらけで、衣服は血によるものか赤黒くくすんでいる。

 アーティはこの少年に見覚えがあった。


「アルン……騎士団長様……?」

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