お風呂場(R18)
湯煙で少し曇った風呂場。タイル敷の奥で、湯船に浸かって左腕を縁に置き、翼鳶は数十センチ離れた目の前の沖島岬を見る。二人ではやや狭い反対側に、岬が足を畳んで浸かり、少々落ち着かない様子で膝に視点を落としている。睫がしばたたくのをじっと見て、鳶が声をかける。
「岬。お湯、熱くないか?」
鳶の呼びかけに、岬は鳶のほうを向く。胸をかばうように置いていた手を口に寄せ、堅い笑みを浮かべて答える。
「別にい?…ん、だいたい、あんたがそんな気を遣うなんておかしいな」
岬は一度口に寄せた手を湯につけ、それで肩に湯をかける。頭の後ろ、濡れが乾ききらないままにまとめ、バレッタで留めてある肩までのセミロングの黒髪。その先が少し揺れる。
「…なんか、変な感じ。あんたと二人きりで、一緒にお風呂入ってるの」
岬は小首をかしげ鳶のほうをちらっと見、また視線を落とす。
「俺は新鮮だな。こういうのいいぜ」
鳶は上機嫌で返す。もっとも、多少声には緊張の気が出ていたかもしれない。小さい頃、互いの親に芋洗いのように同じ風呂に入れられた記憶はうっすら残っている。しかし今日、こういう仲になって初めて、一緒に入浴をしている。今までにもう岬の体はベッドで何度か見て、目に焼きついていたが、湯の中で見るのはまた違っていた。
「鳶?あんた私の体ばっかり見てるでしょ」
岬は苦笑いしながら手で胸を覆う素振りをする。あきれながらもどこか照れている岬の顔は湯で上気し、汗が流れている。それも、鳶はつい観察していた。
「岬、こっちに来いよ」
鳶は湯船の端から少し岬のほうへ尻をずらして近づき、かつ岬を近くへ促す。
「え、なにさ」
言いながら、岬は湯船の底に手をつき、いざり寄る。体が触れる近さになったところで、鳶が岬の首に手を回し、自分のいた側に寄せ、ぐいっと体を持ち上げた。
「あ、ちょ」
岬が戸惑うのもお構いなしに、鳶は岬の頭を近づけ、その口を自分の口でふさいだ。
「鳶…んふ…」
鳶が岬の脇から胸元を撫で、鳶の手に収まるかどうかという大きさのふくらみをやさしく揉む。岬も鳶の首に手を回して応じる。岬が底に膝を置き、鳶の脚の上に座る。唇と舌を合わせながら、汗と湯で濡れた互いの体をぬっとりと合わせ、抱きしめあう。岬の胸元のやわらかい感触を伝って、いつもよりずっと早い鼓動が分かる。
短いようで長い数十秒が過ぎ、口を離し、互いの唾液を飲み込む。顔を見合わせ、ぞくぞくっ、という何とも言えない高揚感に包まれる。
「ふふ…そのままにしてな」
鳶は岬の胸元へ顔を寄せる。
「んん…くすぐったいよ」
岬は膝立ちで鳶に抱き上げられたまま、ふくらみの先を口に含まれる。ちゅぷ、と唇と舌で撫でられ、身を軽くよじらせた。
「気持ちいいか?」
舌先で少しずつ硬くなっていく感触を確かめながら、ふざけ半分でそんなことを聞く。
「そう言ってほしいならさ、んっ、やさしくやって、ね」
先がぷっくりと立っていくところをちゅうっと吸うと、さらに岬が体をよじらせる。鳶の自身も張りつめ、背伸びしていく。はずみで岬の腹にちょんと当たり、思わず先走ってくる。
「ねえ、ちょっと」
岬が鳶の張りつめに気づき、心配そうな顔で言う。
「…お湯の中で入れるのはやめてね。お風呂だと私の流れちゃって、その、痛いから」
「…おう。じゃ、その分ほかで可愛がってやるよ」
「まだしてたいの…?湯あたりしそうだよ」
「寒いよりはましだろ。よし、抱っこしてあっためてやる」
鳶はそう言うと、岬を湯船に腰をつかせる。反対側を向かせ、自分の足の間に膝を立てて座らせた。両腕をつかんで、体を軽く支える。
「風呂の中だと、いつもより軽くていいな」
「何よそれ」
「まあまあ、力抜けよ」
軽口を言いつつ岬を後ろから抱き、バレッタでかきあげられ露になっている首筋に吸いつく。
「…あんた、ホントにうなじが好きだよね。…んっ、私、毎回舐められてる」
鳶は首筋にキスをし、滑らかに剃りあげられたうなじから右肩にかけてを舌でなぞっていく。手で岬の左肩をさすりながら、後ろ髪の生え際と、何束か小さく飛び出ている後れ毛を指で撫でる。
「もう、あんたに首のへんを可愛がられるの、…はあっ、覚えちゃった」
「これもか?」
岬の首元に甘噛みし、じゅううっ、と音を立ててしゃぶる。
「あん…」
強めに攻められ、岬は思わず目をつぶり、慣れたと言いながらも声が出る。むしろ、鳶が岬のうなじを攻めるから気持ちよく感じるようになった、というほうが近い。
「お前、最近首から肩は産毛まで剃ってるだろ。肌、きれいだぜ。舐めたくもなるって」
「だって、あんた思いっきり見てくるじゃない。髪かきあげて触ってきたりするし、こういうこともしてくるし。そうしておかないと恥ずかしいから」
湯と汗と唾液で風呂の灯りを反射し、てらてら光る、剃り跡もなだらかになった曲面。それを鳶が、今度はキスどころでなく口全体で吸いつき、しゃぶり、舐めまわして味わっていく。
「あう…自分じゃうまく剃れないから、わざわざ床屋さんや専門の店に行って頼んだりとかしてるんだよ」
「俺は産毛があってもそれはそれで好きだけどな」
「ほら、やっぱりうなじが好きなんじゃないの。まあ…こういうのも悪くないけど。んっ」
「へへ」
調子に乗った鳶が、不意に歯を立てる。
「痛っ」
岬の感じていた、鳶の口と舌からの心地よかった感覚が一転し、がりっ、と響く。
「悪い、噛んじまった」
後ろを振り向き、岬は鳶を睨む。
「やだ、やめてよ」
困った顔で頼む岬に、鳶の舌も止まる。
「痛くしないで。お願い」
岬が自分の首筋をさすりながら、加えてもじもじと言う。
「跡を隠すのも大変なんだからね。そんなに噛まれたら、歯形まで残っちゃう。みんなに見られたら恥ずかしいじゃない」
「ごめんな」
そう言って鳶は笑みを浮かべて岬の顎を引き寄せ、右から横顔にキスしつつ、おだやかに舌を這わす。
「んー…。もお、あんたってば」
顔を舐められ、岬も右目を閉じ眉を曲げてちょっと嫌そうな表情を作る。しかしまんざらではないようで、これには大して抵抗せず、されるがままにした。
そのまま鳶の右手はふくらみを包み、ゆっくりと揉みつつその硬くなった先を指でもてあそぶ。左手は下へ回し、岬の中へ。茂みをかき分けてそっと中指を差し込むと、岬が抑えていた息を我慢できずにもらし、体をひくりと動かした。明らかに湯ではない、ぬるりとした感触が指先に判る。
「岬、これ」
「…これだけされたら、そうなるよ」
聞かれても今回は振り向かず、じわりと耳まで火照りを強めてつぶやく。
「…さっき、うなじを可愛がられてた時にはね。もうとっくに濡れちゃってて、びしょびしょだったの。…その、う、気持ちよくて…」
恥ずかしがりながらも素直に答えてくれる様子に、もっと可愛がってやりたくなった。ぐむっとうねる岬の中で、中指をゆっくりと動かす。鳶の指先に、岬のものがぴくぴくと細かく動くのが感じられる。以前見よう見まねでやったように、親指を上のほうへ探り、質感の違うところを、ぐりっ、と押す。
「ひゃっ。あう…」
岬の口からもれる声がまして色っぽくなり、体がひくついた勢いで、どん、と足が湯船の側面に当たる。ぱしゃりと湯の跳ねる音と、岬の喘ぎが風呂場に響く。指先にはぬるっとした岬の蜜が絡みつき、やがて湯に混じって消えていく。しゃぶった跡と湯の温かさで濡れて赤く上気した首筋に何度もキスし、舌で撫でる。もっと遊んでやろうと、鳶はふくらみの先を右手指で、ぎっ、とつねる。
「あんんっ」
岬の声と体のひくつきが強く続き、尻が鳶の股に、張りつめて熱くなっているものに当たる。
「鳶、痛いってば。さっき言ったじゃない」
眉を曲げ、鳶の手を押さえ、それでも揉むのを制して言う。
「ごめんな。でも、かわいいぜ」
岬の首筋に這わせていた舌を戻し、鳶岬の耳元でささやく。岬は頬を赤くして涙目になりながら、後ろを振り返って軽く睨む。体の火照りが、湯に浸かっているからなのか、愛撫されているからなのか、すでに岬自身もよく分からない。
「かっこつけてもさ、あんたの…それ、当たってるって。あっついよ。張りすぎじゃないの」
「そりゃな、お前がかわいくてさ」
調子のいいことを言う鳶に、
「やだ、ちょっと、さっきよりももっと硬くなってるよ」
あきれて小言を言っても、
「岬。お前とこうしてるの、すごく気持ちよくて楽しいぜ」
「…もう。ほんと」
あまり意味が無いようで、あきれてしまう。
「そのままこっち向いてな」
鳶が顔を寄せ、岬を後ろから抱いたまま口づける。岬も首を後ろに向けて鳶の顔を撫で、じっくりと舌を絡める。鳶の愛撫はそのまま強めに。ふくらみの先はこりこりとはじけ、中は蜜が溢れだし、熱くきゅうっと指を締めつける。岬の体が何度も跳ねるようにひくつき、湯がぱちゃぱちゃと音を立てる。岬にも鳶の股の熱さが腰に当たって、訴えてくる。
口を離し、ぷはっ、という吐息とともに、糸を引く唾液が二人の喉元へゆったりと垂れていく。はー、はー、と荒い呼吸をしながら、上気しきっている互いの顔を間近で見た。
「鳶、気持ちいい…」
唾液が垂れたままの口から出した甘えた声で、眉を下へ曲げ、目を細めながら岬が言う。
「鳶…。好き。大好き」
「俺も好きだよ、岬」
鳶は左手の動きをさらに強める。右手で岬の体を寄せて抱きしめ、息のかかる近さで横顔を見つめる。
「あっ…鳶…。あんっ…だめ」
岬の横顔は、紅潮して目を閉じ涙を浮かべる。眉間にしわを寄せ、唇をきゅっと噛んでいる。苦しそうに見えるが、以前ベッドでこれが気持ちよさをこらえている顔と知った。鳶はもう一度耳元で優しく声をかける。
「我慢しなくていいからな。イカせてやる。…かわいいよ」
岬は返答もできない様子で、首をぶんぶんと振る。鳶の指先には、湯の中なのにとろとろに岬の蜜が溢れる。
「~~っ!!」
岬の体がびくりびくりと強く痙攣し、湯が何度も大きくバシャッと跳ねる。胸元を抱きしめた鳶の手を強く握って、喉からううう~っと音を鳴らした。痙攣が小さくなりながらしばらく続く。荒い息をつきながら、体から少しずつ力が抜ける。岬の顔が苦しそうな表情から、半目を開け眉をおろした平穏で幸せそうな表情に変わる。
「鳶…」
岬は多くしゃべる余裕もなさそうに、振り向いて涙を浮かべ、とろんとした目で鳶を呼ぶ。
「イッたか?」
鳶は岬の背中に押し当たったまま、表情のかわいさに自身も限界まで張りつめていたが、平静を装い尋ねる。
「はふ…イッたよ…。気持ちよかった…。んん、まだ気持ちいい…」
岬はその気持ちよさに腰を長くひくつかせ、いつものしっかりした口調も忘れる。
「とんびぃ…好き好きぃ」
キスの後拭くこともせず、二人分のよだれを垂らしたままの口を開け、鳶に甘える。
「岬…」
出そうなほど先走って、鳶も目の前の愛しい相手の名前を呼ぶだけで我慢の限界だった。岬をぎゅうっと強く抱きしめて、つい口走った。
「なあ、…入れたい」
岬はそれを聞き、とろんとした目つきを少しやさしくした。湯船から上がって、壁を背にし端に座る。
「いいのか?」
岬は鳶のほうを向いて、真っ赤な顔をして目を斜め下にそらしながら、恥ずかしそうに頷いた。茂みには湯ではないねっとりとした濡れが絡みついて灯りを反射する。鳶も湯から上がり、岬に近づいた。鳶の反り返るほどに張りつめたそれを見て、岬は改めて驚いた顔をした。
「うわ、こんなに」
体が触れる距離になり、岬が鳶のものをそっと触る。上を向いた先から出ているものをちょんちょんとつついたりし、鳶をじらした。鳶も正面から岬のそこを触る。岬は黙って下唇を甘噛みし何も言わなくなる。しかし、じっとりと濡れて充血した岬自身に顔を近づけて舐めると、ぴくぴくと反応してさらに奥から溢れてくるのが分かった。
「そうか。これなら痛くしちゃわないな」
顔を上げると、岬が噛んでいた唇をぬらっと開く。
「…来て」
「…いくぞ」
顔を見つめ抱き合って、座っている岬の位置を確かめる。その中に、ずるり、と鳶自身を滑り込ませた。
「あっ…はあ…」
今度は岬が鳶の首を抱く。もう何回目かもわからないキスをし、さんざんお互いの唾液が混ざった舌をまた絡める。互いにそろそろ舌がひりひりしてきたが、気にもしなかった。鳶が自分の中で動く、たくましくやさしい感触が愛おしい。
「悪い、すぐ出そうだ」
「んっ、…いいよ。…ふふ、出しちゃって」
鳶の動く感触が、指や舌、口で可愛がられる時とはまた違ううれしさを覚えさせる。鳶も痛いくらいに張りきった自身から伝わってくるしびれるような気持ちよさに、腰の動きがつい早まる。自分の愛撫で悦んで、びしょびしょに溢れさせて受け入れ、きゅうっと自身を包み込んでくれている。
「出る、ぞ…。岬っ…」
「来て、鳶っ」
鳶は岬に腰を密着させ、岬は鳶の腰に脚を絡めた。
「あああ…っ」
どくっ、どくっ、という陽気な律動が岬の中に何度も響く。鳶は岬を抱きしめて、湯冷めしそうなのも忘れて首筋にキスをする。岬は目をつぶり鳶の律動を味わって、息をついて両眉を曲げ、そのリズムと熱さに恍惚の表情を浮かべた。律動が終わってから、足を下ろす。荒い息を耳元でついてぐったりする鳶の頭を、そっと撫でた。
「岬、最高だよ」
改めて岬の顔を見て、鳶が言う。岬の髪が乱れているのを丁寧に手で梳いて直す。その手つきをうっとりした目で見る岬の顔に触れる。そしてつながったまま、見つめ合う。
「…えへへ、きょうはたくさん可愛がってもらった」
岬が上目遣いで嬉しそうな顔をして言う。
「ああ、かわいかったぜ」
「ううん、そうじゃなくて」
「ん?」
「もう。…はあ、とんび、大好き」
「はは、何度目だよ。…うん、岬、俺も好きだよ」
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