近況報告:女子会

「岬ちゃーん、最近どう?」

「…どうって、何がですか?」

「鳶くんと。そろそろ1年でしょ」

「ああ…ええと、ちょっと菜々芽さん、もう」

「わ、それわたしも聞きたい!」

「うんうん」

「ちょ、れっちゃんとれいちゃんまで…。わざわざ聞くようなことじゃないって」

「どうなの、仲いい?優しい?」

「…まあ、それなり、ですね、…うーん」

「なんかひっかかることでもあるの?」

「ひっかかるっていうより、みんなこうなのかなって気になることが」

「え、なんかあったの」

「…この1年、あの、ことあるごとにすっごいベタベタされて」

「へえ?」

「デートで多少気合い入れて行ったら『かわいいなー』って言ってくるし、恥ずかしいのに思いっきり手つないで引っ張られるし、ふたりでいるときなんか、隙みせたらすぐ肩抱き寄せられて。睨んでやってもニカーって超嬉しそうだし」

「うわー、あははは!やばいムカつく!」

「れっちゃん、茶化さないでよ!それで、男子ってそんなベタベタしないって聞いてたのに、なんか鳶おかしくないかなって」

「あー、うん…」

「だってそりゃ岬さーん、あなた鳶くんになんて迫られたか覚えてる?」

「へ?だって、あいつすごい勢いで覚悟決めて迫ってきて」

「そこじゃないよ、みさちゃん。鳶のやつ、みさちゃんにどれくらい片想いしてたんだっけ?」

「…えと…。10年?」

「ね?そういうこと。男の子がそんなわけのわからない長い時間かけて片想いして、やっと念願叶ってあなたと付き合えてるってわけよ?」

「…今までのぶん全部爆発してるってことですか?」

「そうでしょ。それならめっちゃベタベタされても不思議じゃないと思うよー」

「うーん。恥ずかしいんですけどね」

「ベッドのほうもすごいんじゃない?…済ませた?」

「えっ…」

「こんなのみんなどうせ聞きたいっしょ。しゃべっちゃいな。初めていつ?」

「…2か月前に」

「…!」

「ほらほら。やっぱりもう抱かれてるじゃん」

「待ってよって一応言ったんですけどね。下宿に行ったときに、我慢できないって感じで迫られて、流れで押し倒されちゃって…。そのまま…」

「ほぉー…」

「それ以来、もう、ねだられちゃって…。もちろんちゃんと準備はしてくれますけど」

「…おおぉ…」

「…ねえ、下宿に行ったときって、やっぱり最初は何でもないようなこと話すの?そういうことするかもって気がしても」

「おー、烈未ちゃん食いつくねえ」

「そうだったね。『何しよっか』みたいなね。でもなんか、告白されたとき並に顔つき違ってたから。すぐ分かっちゃうからさ」

「…じゃあ鳶のやつ、内心もう『ヤリたい…!』って感じだったんじゃない?」

「さあ?…今はたまに、もう会った時から顔に『シたい』って書いてあったりするけどね」

「はぁー、分かるのかあ」

「…ふんふん、なるほどねえ。まあいいじゃんか。まだこれからだけど、それだけ好かれたら女冥利に尽きるって。うちのママが言ってたよ、女は大切にされてるうちが華なんだって」

「菜々芽さんのお母さんが言ってると説得力ありますね、それ」

「浮気でもされたらホントやってられないから。みさちゃんもそのうち他の子に目移りだけでイラッとくるようになるよー?」

「へえ、やっぱりそういう感じですかねえ。みさちゃん、気をつけないと」

「…浮気?あはは、そんなことしたら即別れてやるから!」

「…自信たっぷりだねえ」

「もう、ひっぱたいて『じゃ、さよなら、翼君』って帰ってやる。ふつーのお友達にリセットね」

「それ、鳶くん一番嫌がりそうだね」

「あ、その口ぶりだと、浮気されないって確信してるね?分からないよー」

「たぶんあいつは、そうなったらもう態度で分かります」

「え、どゆこと?」

「あいつ、嘘つけないもん」

「…ああ、なんか分かる」

「…あたしさ、男は嘘つきと裏切るのと暴力だけは嫌なんだ。みんなそうかもしれないけど」

「自分はひっぱたいといて?」

「言わないで!あれはそう、小さいころからお世話してた癖で…あいつがバカなことしたらついやっちゃうの!痛くはないはずだしさ」

「はは、鳶くんさ、たまに見るとみさちゃんにペシってはたかれてるのすら嬉しそうだもんねえ」

「鳶はバカだけどさ、やり方がストレートで嘘がつけないから。隠し事なんてまずできないの知ってる。それに、あたしを殴ったりなんてしないし。だから、…まあいいかなって」

「あれ、やっと聞いた。今の、みさちゃんが鳶と付き合ってる理由?」

「え?」

「ほんとだねえ。てっきり腐れ縁で押されて根負けしてなんとなくかなーって思ってたら」

「あー…。あんまり深く考えたことなかったですけどね。そうかも…」

「あはは。岬ちゃん、鳶くんのこと好き?」

「うーん…そういうふうに考えたこともないですね。一緒にいて変に『かわいらしくしなきゃ…!』みたいにかっこつけなくていいのは楽なんですけど」

「…ふふ。十分じゃん。うらやましいねえ」

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